12日、尾身茂が政府分科会会長として単独で会見に登場、東京の人出を5割削減する提言を発表した。同時刻、西村泰稔も会見し、お盆の帰省時に密を避けるよう注意を促した。二人は別々に会見していて意思統一がされてない。今週はコロナ対策の分科会が開かれておらず、政府と専門家の間で協議がなされていない。大曲貴夫が「制御不能の事態」と言い、病院がオーバーフローして、入院できない患者が自宅に溢れている医療崩壊の危機なのに、政府からまともな発信がない。 何も動きがない。今週は菅義偉が隠れていて、テレビに官邸会見の絵を撮らせる幕がない。だけでなく、田村憲久や西村泰稔が官邸の玄関広間を急ぎ足で歩く絵がなく、おかしいなと思って首相動静を調べたら、今週は一度もコロナの関係閣僚会議が開かれていなかった。例の、中等症患者を自宅療養にする方針転換が猛反対を受けて挫折し、世論調査での内閣支持率が最低値を更新し、コロナ第5波の感染者は予測を超えて急拡大が続き菅義偉も手詰まりになって逼塞しているように見える。政府は医療崩壊の前になすすべがない。 が、菅義偉が何も考えていないわけではなくて、今週は、コロナを2類から5類に変更するという策を打ち出し、マスコミに撒いて制度執行へと固める政治に出てきた。週初の9日に、厚労省で検討が始まっているという情報を流し、木村盛世だの、三浦瑠璃だの、堀江貴文だのが賛同して世論を盛り上げる動きに出た。マスコミでの世論工作の主軸になっているのは長尾和弘で、10日のプライムニュースに出演して議論を掻き回していた。要するにレッセフェールの棄民策で、政府はコロナ対策の責任から手を引けという主張であり、去年からずっと言われてきた話だ。 バックにいて指南しているのは竹中平蔵で、先週の「中等症=自宅療養」策とセットの政策であり、ネオリベ原理主義の方向性である。ショックドクトリンの手法で、第5波の医療崩壊の機に乗じて、不意を衝く形で棄民政策の攻勢を仕掛けてきた。ネオリベの政治手法には必ずこの惨事便乗のパターンがある。体質的にこの手法を繰り出す。無論、そこには、社会主義思想による構築物である国民皆保険システムを破壊したいという衝動がある。… … …(記事全文3,076文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)