■国葬の弔辞で岸田文雄が絶賛した「安倍晋三の事績」の中でも、特に強調されていたのが安倍晋三の外交方面の成果と実績だった。10/11に発表されたNHKの世論調査でも、安倍晋三の国葬を「評価する」と答えた少数派33%は、評価する理由の第一として、「国際社会から評価されていたから」という点を挙げている。安倍政治を評価する者たちは、外国から高く支持されていたという認識と判断を持っている。海外の諸国民から、そして首脳や要人から一目置かれ、世界政治の中で重要人物だと認められていたと概念づけている。NHKなどマスコミは、安倍晋三に対してそうした像を通説にして撒いている。 だが、果たしてそれは真実だと言えるのだろうか。今回の国葬で意外だったのは、海外の首脳・要人がこぞって欠席した事実である。まず、マクロンが欠席の回答をした。それを見て横並びしたのか、メルケルが出席を手控えた。これはエリザベス女王の死去の前だった。英国も、ジョンソンもトラスも出席すると言わなかった。結局、G7の中で出席はカナダのトルドーだけという惨めな状況になっていたが、最終局面でトルドーも国内の災害対応を理由に取りやめた。キャンセルの口実を探していた事情が透けて見える。マクロンが出席に応じなかった理由は何だろうと想像すると、大きな要因はアメリカが副大統領の派遣に止めたからだろう。 ■その後、名前が出ていたオバマが見送りを決めた。オバマは8月初旬の時点では「参列の方向で調整」と報道が出ている。それが1か月後の9月中旬には「見送り」となった。また、安倍晋三の盟友で蜜月関係のアピールぶりが徹底していたトランプも、暗殺直後の7月10日に葬儀参列に意欲を示しておきながら、蓋を開けてみれば欠席となった。トランプについては、理由について憶測が流れていて、案内状が出されていないのではという見方もある。バイデン政権が日本政府に圧力をかけて阻止したか、バイデン政権の意向を忖度した日本政府がトランプに事情を話して、内々に辞退してもらった可能性がある。 だが、もしそうであれば、トランプの気性からして、その内幕の経過を暴露し、中間選挙に向けてのバイデン政権叩きの恰好の材料にしただろう。本当の理由は別にありそうだ。私は、オバマの欠席も、トランプの欠席も、統一教会が本当の理由ではないかと推測している。安倍晋三が誰に暗殺され、なぜこの事件が起きたのか。7月から8月にかけて事実内容がアメリカでも報道され、統一教会の2世信者の犯行の動機と背景が伝わったのだろう。安倍晋三とカルト統一教会との深い関係が判明するに及んで、国葬への参列がマイナスになり、中間選挙を前にした米国世論に悪い影響を与えかねないという判断に至ったのではないか。… … …(記事全文3,946文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)