日程が半分終わった東京五輪。始まる前、東京五輪は開催賛成派と開催反対派に大きく割れていて、反対派の方が多数だった。反対派は世論調査では中止延期を求める声として整理されていた。現実に開催が強行され、プログラムが半分消化された現在では、中止延期は要求としてリアルな主張ではなくなっている。その代わり、次にどうなるかというと、五輪を開催して良かったか悪かったか、東京五輪は成功だったか失敗だったかという意義と総括をめぐる闘争に移るだろう。 今度は成功派と失敗派に分かれる。東京五輪の評価をめぐって世論が二分され、再び熱い論争が始まるはずだ。無論、そのとき、東京五輪の意味づけをめぐる議論は、菅自公政権を支持するかどうかという政治問題とそのまま直結する。おそらく、東京五輪が始まる前に中止延期を求めていた多数派は、終わった後も否定的な意識に傾き、感染爆発の中で強行した東京五輪は失敗だったという見方に与するはずで、IOCや政府が導いているような礼賛や是認の方向には向かわないだろう。 今、政府寄りのマスコミは、メダルラッシュで空気が変わり、五輪反対派だった者たちの意見が変化したと言っている。東京五輪に肯定的になったと決めつけて世論工作している。果たして本当にそうだろうか。気になるのは、競技を終えてインタビューに登場する日本代表選手の幾人かが、五輪を開催できて本当によかったとか、開催してもらえてよかったとかのコメントを強調している点である。昨日(8月1日)の伊藤美誠がそうだった。この感想は、どうやら本人の政治的立場から直に出ているものだと推測され、なるほどそうかと了解される。 五輪序盤、柔道でメダルを取った選手の中にも、何人か同じ意見を言った者がいた。JOC会長の山下泰裕が、森喜朗から指示を受けて、各選手に対して、メダル獲得後のインタビューでは必ずこの旨を付加挿入せよと差配したのかもしれない。その発言は、本人の率直な感情の吐露かもしれないが、しかし、それをテレビで見ているのは、コロナのために運動会が中止になったり、部活停止を余儀なくされたり、一生に一度の修学旅行を潰された子どもたちだ。… … …(記事全文2,970文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)