今日は今朝から,富山,石川地方で,「警戒レベル5」の豪雨の警報が出たとのニュース.
先月の熊本の地震,今月の千葉豪雨に引き続き,北陸でも自然の猛威による被害が懸念される事態です.日本列島には豊穣な美しい自然があり,それは大変素晴らしいものではありますが,その豊穣性の一端にはこうした災害リスクが否応なく含まれるという事実からは,我々は目を背けることはできない,ということを改めて認識せざるを得ない,朝となりました.
だから,自然を大切にしながら,その猛威に備えなければならないわけで,この日本列島に住む我々日本人にとって,災害に対する「強靱性」の確保に向けた努力は,マスト中のマストの取り組み,と言わねばなりません.
これまで「国土強靱化」の取り組みをはじめた政府は,こうした自然災害が起こる度に
「脆弱性評価」
というものをやってきました.つまり,その災害に対して,その「被災地」はどれだけ「脆弱」だったのか,ということを,その被害の大きさを調べることで,明らかにしていこうとする取り組みです.
この脆弱性評価を通して,「なるほど,この災害に対しては『こういう備え』を<これまで>にしておくべきだったのだな」という事が明らかになれば,「だったら,<これから>は,『こういう備え』を徹底的に進めていこう」ということが見えてきます.
つまり,脆弱性評価をすれば,何が災害に対して弱いのかが分かり,「強靱」にしていく道筋がクッキリと見えてくるわけです.
それは,その被災地の強靱化のみならず,全国各地の強靱化にとっても極めて重要な情報を提供することになる,という次第です.
ですが…災害で分かるのは「弱いところ」だけではなくて「強いところ」もあるはずです.
とりわけ,今回の熊本地震は,ほぼ同じ地域で10年前にも同規模のH28熊本地震もあったわけで,両者を比較すれば,「この10年で,熊本はこれこれこういう風に地震に対して『強く』なっていたんだ」ということが見えてくる筈です.
この視点は,「弱いところ」を明らかにする「脆弱性評価」に対して,「強いところ」を明らかする
「強靱性評価」
と呼ぶことができるでしょう.
実際,今回の熊本被災地からは,「10年前と違って,こういうところが被害が軽減されたんじゃないかと思います」という声は,実に多くの側面で聞こえてきます.
もちろん,地震動の物理学的強度が前回よりはトータルで言って小さかった,という点はあろうかと思いますが,それを差し引いても,間違いなく「強靱性」が高まっているという事を示す情報が上がってきています.例えば,
『《死者0人、倒壊家屋は2棟》震度6強でも“被害はほぼ0”熊本県益城町を救った「10年前の教訓」…「地震に強い町づくりを」進めていた都市計画の中身』
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d18c50fe5a0c7bc122603efae729deff31493f4
という記事では,
『「2018年に新しい都市計画を立て、道路を拡幅することや、住宅エリアを決めて、地震に強い住宅の建設を進めたのです」(報道関係者)』
といった声が紹介されています.
あるいは,
『10年前の地震で液状化した2つの地区「10年前と同じ」「新たな被害なし」明暗を分けたのは…』
https://news.yahoo.co.jp/articles/117bec46ef8d4087fd6bf10998efb39196f6d8b9
という記事では,前回の熊本地震と同様の「液状化」の被害を受けた地域が,今回の地震でも見られる一方で,
「10年前の地震後、液状化の対策工事を行った近見地区。市によると今回の地震では液状化の報告はないということです」
という声が報告されています.
これらの事例は,今後より詳しい調査が必要であることは論を待ちませんが,
「こういう対策を行ったことで,これだけの被害を防いだ」
という事実がある可能性を示しています.
こうした視点の評価が「強靱性評価」であり,それを進めることで,
「強靱化の価値」
が明らかになってきます.
そして,そうした「強靱化の価値」が明らかにされれば,熊本エリア内の全地域で,そして同じような災害被害が危惧される全国各地で,今回災害被害が抑制された「防災まちづくり」や「液状化対策」を,地域,そして国家が持つ(人的,あるいは財政的)資源を可能な限り使って進めることが必要だ,ということが,
「定量的に実証的に示される」
という事になると期待されるわけです.
ところが,これまでの防災,強靱化行政のみならず,学会においても,「弱み」を明らかにし,「失敗から学ぶ」ための
「脆弱性評価」
は様々に進められてきましたが「強み」を明らかにし「成功から学ぶ」というべき
「強靱性評価」
の方は,必ずしも十分に進められてきたとは言えないように思います.
国土強靱化が始められて今年で15年目.
全国各地で「強靱化」の取り組みがそれなりに進められている筈…です.
だとしたらそろそろ政府も学会も,過去15年間の強靱化の取り組みの有効性を明らかにする
「強靱性評価」
を始めることが必要なのではないかと思います.
そうすれば,脆弱性評価一辺倒の強靱化対策よりも,より効率的効果的に強靱化の取り組みが進められることがより期待される事になります.
なんと言っても,弱みを考えるネガティブな「反省」ばかりでは,人間,誰しも元気がなくなってしまう…という側面もあるでしょう.もちろん「反省」はとても大切なものではありますが,時には,バランス良く自らの取り組みの「ポジティブ」な側面を公正中立に認識することも必要な筈.
今後は,学会のみならず,政府においても,脆弱性評価と強靱性評価の双方をバランス良く推進していくことが,被災地の効果的復興のためにも,全国の強靱化のためにとても大切なのではないかと,思います.
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