今週はメルマガ配信が滞り、大変失礼いたしました。
この一週間、土木学会の熊本地震特別プロジェクトの結果取りまとめと、あさってのなにわブルースフェスの準備でバタバタとしておりました。
……が、お陰様でようやく(!)今朝、熊本地震プロジェクトでの、以下の「学術的所見」が取りまとまりました!
「令和8年熊本地震:被災地支援・復旧復興・強靱化に関する学術的所見(第二次)」
https://jsce-ip.org/disaster_related_info/2026_kumamoto_eq/
このメルマガを書いている時点ではまだ、最終ファイルのアップロードがなされていませんが、すぐにアップロードされる予定です。
前回の「第一次」所見は、緊急提言という趣旨で、「被災地支援」と「復旧」についての学術的知見を取りまとめたものですが、発災から50日以上経過した時点で公表する「第二次」所見は、より長期的な視点から「復興・強靱化」を提言する内容となっています。
その詳細は、アップロードされた後に改めて解説差し上げますが、その目玉は、我々の研究室で推計した「九州新幹線運休」の経済被害の推計と、過去10年間の新幹線の「強靱化」対策が、どれくらいの効果を持ち得たのかを推計した結果に基づく、今後の「新幹線強靱化」のあり方についての提言です。
実は土木学会では、橋梁や住宅、水道などについても、10年前の2016年熊本地震の反省を踏まえ、過去10年間で推進してきた、それぞれの「強靱化」の取り組みが、どれだけの効果を持ったのかの定量的推計を行っています。
こうした推計を、今回の土木学会の提言では、先日メルマガでもご紹介した
「強靱性評価」
と呼称し、これを学術的に政府等に提言差し上げるものとなっています。
ただ、橋梁や水道等については、いまだ現状の被害についての詳しい調査が終了しておらず、それらの強靱性評価は完了していません。
ですが、九州新幹線は、昨日9月18日から、全線「復旧」と相なっています(ただし、一部区間は低速運行という仮復旧の段階ですが、ダイヤ調整等を通して、大きな混乱はおおむね解消されることになります)。
ついては、今回、その強靱性評価結果を復旧翌日に学会から公表できることは、今後の新幹線の復旧のあり方を考える上で、重要な意味を持つものと思われます。
すでに、九州新幹線の破断の経済被害については、「藤井研究室」からの数値として公表していましたが、今回はそれを「学会」として公表する格好となります。
しかも、今回の公表にあわせて、「過去10年間の強靱化の取り組みの価値を推計する『強靱性評価』」の一例を推計し、それを付録として、藤井研究室のレポートを追記し、「学会」の提言内容に付記する格好といたしました。
https://jsce-ip.org/wp-content/uploads/2026/09/3bceb1318b2cb7af592ad8fca56be7c2.pdf
実は10年前の熊本地震では、新幹線が「脱線する」という事故が生じています。
その際、不幸中の幸いで、大きな二次被害は生じなかったのですが、新幹線の脱線は、その脱線場所によっては最悪、駅舎や橋梁などに深刻な被害をもたらす二次被害が生じるリスクがあったのです。
こうした反省の下、九州新幹線では、脱線防止のための取り組みが加速されました。
今回の地震発生時点、恐るべきことに、一本の新幹線が、激甚被害が生じた「新八代駅―新水俣駅間」を走行していました。ただし、その列車は地震発生時点において、脱線することなく、無事、停車できています。
したがって、厳密な検証は今後さらに進める必要がありますが、そうした脱線対策がなかったとすれば、脱線していた可能性は、少なくとも現在公表されている資料を踏まえれば決して否定できない、ということができます。
そして、そうした脱線防止対策が不在であれば、脱線が生じ、そして、深刻な二次被害(橋梁被害など)が生じた可能性もまた、否定することはできません。
そうした事態が生じた「確率」を推計することは現時点では容易ではありませんが、もしもそうした被害が生じたとすれば、どれくらいの被害が生じ得たのかを推計したところ、「実質GDPで約194~833億円、名目税収で約25~107億円の損失」が生じていた可能性が示されました。
……ということは、新幹線の強靱化対策には、「名目税収で約25~107億円」の「価値」があり得たと推計されることとなります。
そうである以上、政府は、この新幹線の強靱化対策で数十億円程度の「増収」効果があったということになるわけですから、財政健全化の視点から考えても、国費で新幹線の強靱化対策を進めることには意味があったと言うことができるわけです。
もちろん、以上の話はいくつかの仮定を施した上での想定値に過ぎませんが、論理的に考えて、強靱化には経済被害、財政被害を回避する経済効果・財政効果があるということは、紛うことなき事実だと言うことはできる、ということを今回の試算が示していることは間違いありません。
今後はぜひ、熊本地震の復旧復興のみならず、被災地のさらなる強靱化、ひいては日本全国の強靱化において、こうした理論的かつ定量的な分析を踏まえた合理的判断が下されることを、心から祈念したいと思います。
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