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小川榮太郎「批評家の手帖から」

小川榮太郎(文藝評論家)

小川榮太郎

我が救国運動、そのヴィジョン。本格スタートへ、秒読み。
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私の救国運動と改めて言うのもおかしいくらい、私の人生は自動的に救国の志の展開であった。あるいは救国の志の展開でしかなかった。

是非の問題ではなく、ただ、私はそういう風にしか生きられず、それが楽しくも有難くもないのだが、かと言って別の人生を歩みようがない。例えば金儲けや出世が悪いとも思わず、嫌いどころか金も名誉も地位も好きだけれども、ではそういう事を追求できるかと言われれば、頭も心も体も全くそういう事を追求する仕組みになっていない。態勢がとれない。

安倍氏を思わず助けて総理再登板に人生を賭けたのも、別に私の意志の力ではなく、意志を越えた強制力で私をコントロールする何かに引かれてのことだったと言う他はない。

その安倍氏を喪い、私は書斎に帰る選択をしたが、その一方で、結局は日本の未来に患う気持そのものに変化はない。

新たな組織運営を始めるのは物書きとしては辛いのだが、実務を牽引する引き受け手もなく、私自身が結局は執筆・研究時間を犠牲にして取り組むほかはなさそうだ。

以下は、近日公表する予定の私の救国ヴィジョンの原案で、このメルマガで初めて公開する。

この線で本当に事が動けば日本文明は再び息を吹き返すと信じている。逆にそれがなければかなりの確率で回復不可能なところまでこの国は衰滅する。バトンを渡せる若い世代の強力なpowerの出現を切望しながらまずは私が事を始める。


「日本とは何か。日本人はどこから来たのか。日本国はどこに行くのか――。

私の脳裏からこの問いが消えたことはありません。

第二次世界大戦後の日本のアカデミズムでは、国家の意義を努めて軽視し、日本の歴史をまるで負の遺産のように扱う風潮が長く続きました。言うまでもなく敗戦に伴う東京裁判史観とマルクス史観の影響ですが、そうした思潮に支配された結果、現実の日本人と日本社会はどうなったでしょうか。先人に恥じない誇らかで成熟した国民たり得ているでしょうか。一人一人は幸せになったのでしょうか。日本国は自ら平和を守り、先人から譲り受けた遺産をしっかり子孫に継承できているのでしょうか。

戦中から敗戦直後の日本。一面の焼け野原、ぼろを纏った子供達の輝いた眼差し、全身から生命力が溢れた姿を写した写真が残っています。

最も過酷な環境でさえ輝いていた日本人の瞳――。私は小林秀雄、保田與重郎、福田恆存らの遺志を継ぐ文藝評論家としての人生を選びましたが、歴史と文学を学び続ければ学び続けるほど、縄文から昭和戦前までの日本人のいのちの輝き、個性の強烈さ、共同体の絆、生き甲斐の横溢、人生の充実、そして民族的な成長力への驚嘆と尊敬を禁じ得ないのです。勿論、悲惨も不幸も過ちも多々あったことでしょう。しかしながら、それを克服しつつ、日本人はなんと創造的で豊饒な生のリレーションを続けてきたことか!

対するこの数十年の日本。私の眼には、まるで突如、自滅の急坂を真っ逆様に転げ落ち始めたとしか思われません。国民の成長・成功意欲の低下、コンプライアンスという名の事なかれ主義の蔓延、日本の伝統的な叡智や文化の破壊、多層をなしていた多くの共同体の絆の消滅、教育と教養の低迷は留まるところを知らぬ有様です。

その結果、我が国は世界最速で進む少子化と人口激減、強みだった物作りや知財分野の急激な衰退、基幹産業の不在、さらには国柄の中核にある皇室の男系男子継承の危機に見舞われています。

ロシア、北朝鮮、中国の軍事的脅威は、今や極点に達し、日米同盟依存の国防は事実上不可能になっているにもかかわらず国民は覚醒しません。食料、エネルギー、国土、情報技術の安全保障も脆弱そのもので、台湾危機が勃発すれば短時間の内に国民の生命そのものが危ぶまれる事になるでしょう。

なぜこうも日本は衰退を続けているのか。これこそが30年以上にわたる私の根源的な問いでした。そして、今、原因を最も単純化すると次のようになると私は考えています。

しきしまの日本(やまと)の國は言靈の幸ふ國ぞ――不世出の大歌人柿本人麻呂の歌にそうあります。戦後日本のイデオロギーと教育は自国の歴史を否定し、国語の美しさを顧みず、日本最大の遺産である歴史と文学をいとも気安く捨て去った。

単刀直入に申し上げましょう。これが日本衰弱の根本原因です。なぜなら歴史と文学こそは日本人の脳力、人格力の源泉だったからです。脳力とは思考を形成する基盤的能力であり、人格力とは社会を形成する基盤的能力です。日本を長年超一流の国として機能させてきたそうした基盤的能力を疎かにすれば、我々は劣弱になるほかはない。これほど単純な話はないのではないでしょうか。

萬葉集は抒情詩集として世界最古、最大、最美と称してよいものですが、天皇から庶民までの和歌を広く収録しています。源氏物語、平家物語を頂点とするあまたの物語も高貴な身分の人々から庶民にまで広く愛され続けました。観阿弥、世阿弥が大成した能楽や宗祇が大成した連歌は世界に類を見ない難解で洗練された藝術ですが、驚くべきことに武士、庶民らにも広く愛好されていました。

勿論、かほどの驚異的な教養力は孤立したバラバラの個人によっては決して達成できません。歴史と文学は日本人の結びとして働いてきました。歴史と文学は、過去と現在を結びます。そして、それは同時代の異なった階層や分野の人々を、価値観・知識・人・物・金のネットワークの力強い循環によって結びます。

歴代天皇は藝能の最もよき庇護者で、自らも卓越した藝術家でした。戦国武将らは能楽師、連歌師、絵師、茶人の庇護者であり、商人はよき統治者たる武将を選び、投資しました。幕末の志士たちは皆若い貧乏侍でしたが、開明派の大名たちは彼らを抜擢し、豪商が彼らに惜しげなく金を出しました。文化・政治・経済における高度人材の間で好循環が生じる時、それは庶民に至るまでの民度を上げ、日本人全体のネットワークを強化します。

したがって言霊の幸ふ國が続く限り、我が国は時に世界史に稀な長期平和、環境先進国、庶民による高度文化を実現し(江戸時代)、あるいは非西洋で唯一植民地化を免れ、成熟した議会制民主主義、資本主義、近代文化を瞬時に達成して列強入りを果たし(大日本帝国)、敗戦を経てさえ奇跡の復興、高度成長、川端康成、棟方志功、黒澤明ら無数の藝術上の巨人を生む昭和元禄(戦後昭和時代)を成し遂げました。

私は非力の極にいますが、それでもなお、批評家として研鑽してきた学問と、目利き・構想能力に賭け、喪われてしまったこの構造全体を日本に取り戻したいのです。そこにしか日本再生の手がかりは存在し得ないからです。

私が今、ここに準備したのは、国家存亡の危機に対処し得る有能な研究者たち、天才的な技藝を持つ藝術家たち、私が十年余にわたる故安倍晋三元首相との共同作業の中で培ったネットワークと信用です。規模こそ小さけれどパワフルな原石であると自負しています。

私は、日本再生のための鍵概念を短期目標から長期目標へと順に、「総合安全保障」「文化力の結集」「言霊の幸ふ國の復活」に置き、活動を展開します。

このような領域横断的な場(トポス)は世界でも類稀でしょう。

ささやかな出発ですが、大方のご賛助を心から希うばかりです。




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