… … …(記事全文3,525文字)「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折 完結編」(春日太一著・2750円・文藝春秋)
「シナリオにはやっぱり起承転結があるんだよな」
黒澤明がこんな自嘲の言葉を吐いた。
原因は脚本のプロともいうべき2人が揃いも揃って大失敗の脚本を書いたこと。「日本剣豪列伝」という映画を撮ろうとした。登場するのは有名な剣豪ばかり。で、剣豪たちのクライマックス・シーンをオムニバスで撮ろうってわけ。けど、いいとこ取りしたシーンの連続なんて薄っぺらで面白くないとわかった。
そこに気づかないほど、直前にある脚本で失敗してたわけ。
「ある侍の一日」という作品を撮ろうとした。重要シーンは、竹馬の友2人はいまやそれぞれ藩の仕事をしている。ある時、昼休みに弁当を食べながら魚釣りの約束をしたり、お互いの子どもの行く末を語っていた。そこに不祥事が発生し、1人の武士が詰め腹を切らされることになる。で、彼は介錯人にこの友人を頼む。
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