不破哲三が共産党大会2日目に登壇して演説、綱領改定案の意義を説明して中国批判は当然だと強調した。また、「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義、共産主義への大道である」と述べ、今回の綱領改定のキーエッセンスを教説している。不破哲三の党大会での発言は14年ぶりだとある。今回の党綱領改定は不破哲三が指揮して行われたものだ。本人にとって最後の仕事のつもりだったのに違いない。 最初に「綱領一部改定案についての提案報告」の長い文書(19年11月4日付)を一読したとき、これは不破哲三の執筆だと私はすぐに直観した。署名は志位和夫だが、文責は間違いなく不破哲三であり、論理構成も細部の表現も不破哲三によるものである。特に、中国批判の論拠を証明するに当たって、「発達した資本主義国での社会変革」の命題を立論し、マルクスの古典から「五つの要素」を抜粋して列挙するという方法は、理論的胆力からしても、知識的力業の面からも、不破哲三以外に為せる者はいない。 前回も指摘したが、マルクスはこのような「五つの要素」を総括的・明示的に並べて社会主義を説明してはおらず、これは日本共産党のオリジナルである。党の中でマルクスを独自に解釈して新しいテーゼを構築できるのは不破哲三だけで、能力の面でも権威の面でも他に誰一人として他にいない。不破哲三の最後の大仕事であり、碩学の老理論家の壮挙に、正直、私は感服する。報告は共産党らしく非常に生真面目で、論理的な不整合がないように緻密に設計されている。 また、読むのにタフな疲労感を覚える分量があり、共産党の歴史を背負った品質と重量の諸概念が配置されている。読みながら浮かび上がるのは、優等生で真面目な学者エリートの不破哲三の姿であり、古典を自家薬籠中のものとして自在に操るレジェンドの極みである。まさに、この綱領改定案文書は不破哲三の渾身の作品だ。老革命理論家の集大成であり、日本共産党の行く末を慮った、組織に送り遺す最後のプレゼントと言っていい。… … …(記事全文2,952文字)