… … …(記事全文5,923文字)8月24日(月)、厚生労働省前で行われた薬害根絶デーのリレートーク(被害者が野外で演説するイベント)を撮影していたジャーナリストの鈴木エイト氏が、HIV薬害被害者で元参議院議員の川田龍平氏に「退くよう身振りで示された」とXに投稿したことをめぐって、被害者や支援者との間で非難の応酬がなされた。私は鈴木氏が「道を塞いでいたなら、ごめんなさい。お互い通行の邪魔にならないようにしましょう」などと大人の対応をすれば済む話だったと思うが、それとは別に鈴木氏のHPVワクチン問題に対する取材姿勢が如実に現れている部分がやり取りの中にあり、そちらのほうに興味を惹かれた。
それが、「私に対する認知が相当歪んでおられるようなので、まずは私の書いてきたHPVワクチン訴訟関連記事を読んでください」として、鈴木氏自身がXのリプライにURLを貼り付けていた「『不安な人こそ読んでほしい』鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート」という記事だ(Slow News 2024年8月17日https://slownews.com/n/n532cd3cfe708)。その記事のリードの部分には、次のように書かれている。
「『接種後に重篤な副反応を引き起こし、薬害として集団訴訟が提起されている危険なワクチン』
そんな認識をいまだに持つ人も少なくない子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)。だが、HPVワクチンについては国内外で有効性と安全性を担保するエビデンスが積み上がっている。国内での大規模な疫学調査によって接種群と非接種群に有意差(症状のオッズ比で有意に1を超えるもの)がなかったことも確認されている」
リードの部分なので、鈴木氏ではなく編集者が書いた可能性もあるが、同じライター業である私なら、自分の主張や事実と異なることが書かれていたら、修正するように申し入れる。なので、上記の認識は、鈴木氏自身も共有しているはずだ。実際、記事全体も接種勧奨の再開やキャッチアップ接種、大学生による「正しい情報」を伝える活動を肯定するなど、HPVワクチンの安全性と有効性を自明のこととするトーンで書かれている。
だが、この鈴木氏の認識は、推進派の情報に偏った「思い込み」に過ぎない。その思い込みがあるからこそ、健康被害を訴える人や原告弁護団、薬害オンブズパースン会議をはじめ支援者を色眼鏡で見てしまうのだろう。推進側の情報をシャットアウトする必要も、慎重派の情報を鵜呑みにする必要もないが、少なくともHPVワクチン訴訟に対する自分の認知は「歪んでいない」と主張するならば、鈴木氏には以下のような事実もしっかりと頭に入れて、記事や本の中でも無視しないようにしていただきたい。
読者のみなさんは、ピーター・ゲッチェという世界的に有名な医師・研究者をご存じだろうか。あのコクラン共同計画の共同創始者の一人で、EBM(科学的根拠に基づく医療)の世界的権威の一人だ。製薬マネーによってエビデンスが歪められている実態を厳しく批判し、様々な医薬品の安全性・有効性を厳格に評価してきた。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%A7
2018年、「予防効果が高く、有害事象のリスクは高まらない」としたHPVワクチンのレビューをコクランが公表した。これに対してゲッチェ氏らは、「ワクチンの関連企業から資金提供を受けている研究者がこの論文に関わっている」「レビューが対象とすべき研究の半数が無視あるいは除外されている」などとして反発。激しい論戦のうえ、ゲッチェ氏はコクランの理事会から追放されてしまった。だが、ゲッチェ氏は政治的・商業的利害関係から独立し、「科学における誠実さと透明性を守る」ことを目的とした「科学の自由研究所(Institute for Scientific Freedom)」をコペンハーゲンに設立。現在もXなどSNSを通じて精力的に発信を続けている。私もゲッチェ氏のXアカウントをフォロー中だ。
そのゲッチェ氏が、2024年9月にHPVワクチンに関する「専門家評価書」を作成し、米国の裁判所に提出している(https://www.scientificfreedom.dk/wp-content/uploads/2025/04/2024.09.09-Gotzsche-Peter-Expert-Report.pdf)。この評価書は、製造販売元であるメルク社が規制当局に提出したHPVワクチン「ガーダシル4」「ガーダシル9」などに関する動物実験や臨床試験のデータ等を詳細に検討したもので、コクランレビューで用いられてきたのと同じ方法で検討したものだ。これを読めば、いかにガーダシルの有害事象が過小評価されているかがわかる。評価書が英語で書かれているので、その要点をGoogleAIに簡潔にまとめてもらった。なお、これをまとめたオーストラリアの調査報道記者による記事の日本語訳もあるので、こちらも参考に読んでみてほしい。https://note.com/spiderman886/n/n552ca382da9a)。

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