… … …(記事全文5,897文字)子宮頸がんは減っているのか
先日、ある人たちとワクチンについて議論する機会があった。私がHPVワクチン(いわゆる子宮頸がんワクチン)の有効性と安全性について疑問を述べると、「でも、(日本の)子宮頸がんは減っています」と反論された。その人だけでなく、国内外において子宮頸がんの発症数が減っているデータを見て、「HPVワクチンのおかげだ」と信じてしまう人が多いのではないだろうか。だが、発症数の増減を有効性の根拠にするのは非科学的だ。それをよく分かっていない人が多いように思われる。
その理由は後ほど述べるとして、HPVワクチンの接種開始後に子宮頸がんの診断数が減っているのか、まずはそれを確認してみよう。国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」に、がん統計の集計表をダウンロードできるページがある。そこから、子宮頸がんの「診断数」(全体と40歳未満)を抜き出してみた(1段落下の表)。なお、「接種世代下」「接種世代上」「検診率」の列はオリジナルの表にはなく、私が付け足したものだ。
この表を見る前に、前提を確認しておきたい。HPVワクチンは小学校6年生(12歳)~高校1年生(16歳)相当の少女を対象に、2009年(平成21年)10月から接種が開始された。2013(平成25年)年4月に定期接種となったが、わずか2ヵ月半後の6月14日に積極的な勧奨が差し控えられ、約9年間のブランクを経て22年4月に接種勧奨が再開された。勧奨再開後の定期接種対象者は、発症者数の統計が出ている2023年時点では、まだ13歳~17歳ということになる。この年齢で子宮頸がんを発症するのは極めてまれだ。なので、効果を見るにはまだ早い。
そこで今回は、接種が開始された2009年10月~接種勧奨が差し控えられた13年6月までの約4年間に接種した人たちを、HPVワクチンの影響があるかどうかを見る「接種世代」とした。その接種世代のうち、最も下の年齢(接種世代下)と最も上の年齢(接種世代上)を、それぞれ左から三つ目、四つ目の列に表示した。そして、年代別診断数のうち、接種世代が入るセル(枠)に黄色のマーカーをつけた。
まず、全年齢から見ていこう。2016年から23年の8年間で、子宮頸がんの診断数は大きく減っているようには見えない。その中で目立つのは、前年比で2256人減った2020年(6.4%減)と、逆に2529人増えた2021年(7.7%増)だ。なぜ、2020年を挟んで大きく増減したのか。考えられるのは「コロナ自粛」だ。調査間隔の関係でデータが抜けているが、この期間、がん検診の受診控えがあり、がんの発見が減った可能性がある。だとすると21年に診断数が増えたのは、その反動だと考えられる。このコロナに影響を受けた期間を除けば、全体の子宮頸がん診断数は安定して3万4000前後と見ることができるだろう。


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