… … …(記事全文6,663文字)ランセット(The Lancet)、セル(Cell)をはじめとする有力医学ジャーナルを出版するエルゼビア社の〝Journal of Cancer Policy〟(がん政策ジャーナル)という医学誌に、2026年9月、衝撃的な論文が掲載された。中学入学時のHPVワクチン接種を世界に先駆けて義務化した米バージニア州で、その効果を検証する研究を行ったところ、子宮頸がんの発症を減少させる証拠はなく、年齢別の傾向を調整すると子宮頸がん発生率の増加と関連していたというのだ。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213538326000780。
Xでは、さっそく「HPVワクチン批判者」と「ワクチン狂信者(カルト)」との間で小競り合いが起こっていた。だが、どちらもハイライトに書かれている表面をなぞるだけで、論文をきちんと読み込んで発信しているとは私には思えなかった。この論文の肝は、「解析の方法」にある。そこが理解できないと、この論文の価値は分からない。そこで私なりに論文を読み込んで、理解した内容を以下に概説してみた。なお、この研究で採用されている解析方法はかなり難しいので、理解が不十分なところがあるかもしれない。なので、できれば統計学に詳しい人に読んでいただきたい。そして、もし私が誤認しているところがあれば、どこを正すべきか、ぜひ教えていただきたい(なおワクチンの安全性と有効性を無批判に信じる非科学的な人たちのことを、今後は「ワクチン狂信者」と呼ぶことにする)。
もう一つ、誤解のないように言っておきたいのが、この論文は「HPVワクチンそのものの効果」を検証したものではないということだ。そうではなく、「HPVワクチン義務化の効果」を検証している。そこを早とちりして、「HPVワクチンは効かない」「むしろ子宮頸がんを増やす」などとXなどで書いてしまうと、ワクチン狂信者に突っ込まれてしまう可能性がある。なので、ワクチン批判者がこの論文についてポストするときには、その点もしっかりと踏まえておくべきだろう。
とはいえ、「HPVワクチンを義務化しても子宮頸がんは減らず、むしろ子宮頸がん発症率の増加と関連していた」という結果の衝撃は大きい。なぜなら、このバージニア州での結果を踏まえると、HPVワクチンには狂信者が期待するほどの有効性(社会全体に与えるベネフィット)はないかもしれないからだ。しかも、観察研究とはいえ、できるだけバイアスを減らすために、かなり厳格な解析方法を用いている。だからこそ、この研究のインパクトは軽視できないのだ。では、どのような論文なのか。

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