… … …(記事全文4,685文字)米国産ジャガイモの輸入解禁に関するニュースが話題を集めているが、その見出しだけを追っていると大きな勘違いをしてしまいがちである。 「日本がこれから初めてアメリカ産のジャガイモを輸入する」という話ではないからだ。実は日本はすでに2006年から米国産の生ジャガイモを輸入している。
ただし、それはポテトチップスなどに加工するための指定加熱加工施設向けに限られていた。今回議論されているのは、そこから一歩踏み出し、スーパーの店頭などで私たちが日常的に手にする「一般流通用」の生鮮ジャガイモの解禁を認めるかという点である。つまり、これまでの加工用から家庭用へと枠組みを広げる検討が進んでいるのが真相である。これまで生鮮ジャガイモの全般的な解禁が見送られてきた背景には、病害虫、特に「ジャガイモシストセンチュウ」や「ジャガイモシロシストセンチュウ」の国内侵入を防ぐという検疫上の理由があった。 シストセンチュウは非常に特殊な害虫で、雌の体そのものが「シスト」という殻になり、その中に数百個の卵を抱えた状態で土壌中に残る。米農務省(USDA)によれば、条件によっては30年間も生存可能だという。一度、清浄な農地に侵入してしまえば根絶はほぼ不可能とされる。 従来の加工用輸入では、指定された米国地域→検査→日本の指定港→指定加工施設→加熱加工という閉じた経路に限定することで、ジャガイモや付着土壌が農地・家庭菜園などへ流出するリスクを徹底的に遮断してきた。これが一般流通用となれば、スーパー・飲食店・家庭へと流れていくことになり、リスク管理の難易度は一気に跳ね上がる。
米農務省(USDA)によると、ジャガイモシストセンチュウは1941年にニューヨーク州で確認されて以降、現在もNY州8郡の一部に封じ込められている。2025年時点で規制区域は約8万9,300エーカーにのぼるが、実際に感染しているとされる土地はそのうち約5,945エーカーにとどまり、むしろUSDAは規制区域を徐々に縮小している。 一方、より問題になりやすいジャガイモシロシストセンチュウは、2006年に全米最大のジャガイモ産地であるアイダホ州で発見された。 米農務省(USDA)によれば、発生はアイダホ州南東部の半径約8.5マイルの範囲に封じ込められているとされ、2025年6月時点で感染圃場31、関連圃場25の合計56圃場、規制面積は約6,316エーカーである。 つまり、「アメリカのジャガイモ産地全体がシストセンチュウに汚染されている」という状況ではない。
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