週末にかけてのテレビ報道では、新型コロナウィルスの検査の方法と能力と体制がフォーカスされた。その関心のためか、NHKの9日朝の日曜討論では、感染症医学や公衆衛生の専門家が居並んで討論する図となっていた。そして、その関心は、横浜港に停泊しているクルーズ船の乗員乗客の全員に検査を実施すべきか否かという政策問題の判断に直結し、専門家たちの見解と立場を分ける構図となっている。 一瞥したところ、対立の図式は次のように整理できそうだ。テレビに常連で出演して解説する専門家の間では、岡田晴恵と浦島充佳の二人が明確に認識と主張が違う。浦島充佳は典型的な御用学者で、政府の措置を常に正当化し、政府の判断に根拠を与えて大衆を納得させる役割を演じている。浦島充佳の結論は、今回の感染症は流行しても恐れるほどの脅威ではないとするもので、PCR検査は人手がかかる作業だから、クルーズ船の全員に検査を受けさせる必要はないというものだ。 一方の岡田晴恵の方は、クルーズ船の全員に検査を受けさせるべしという持論であり、早期に国内で検査できる体制を整えるべしという意味の発言をしている。政府批判は口にしないが、「お願いします」という口調で、スタジオに同席した政治家たち - 石破茂や新藤義孝 - にその旨を進言し要請している。 国立感染症研と全国の衛生研に緊急で予算をつけて対策せよという政策提言をしているように聞こえる。 この二人の温度差は、そのまま、NHKの日曜討論に出演した、岡部信彦(川崎市健康安全研究所所長、国立感染症研究所・元感染症情報センター長)と尾見茂(元WHO西太平洋地域事務局)との対立に重なっているように窺われる。端的に類別すれば、前者が官邸と直結した御用学者であり、後者がWHOに準じた良識派である。尾見茂の発言は、その柔らかな物腰といい、いかにも典型的な良識派の表象で、嘗ての日本政府、嘗ての国民の健康に万全の留意を払った厚生省の姿を彷彿させる。… … …(記事全文3,640文字)