岸田文雄のウクライナ訪問は電撃でも何でもない。前から漏らしていた。インド訪問の機会にウクライナに足を伸ばすだろうという観測は、マスコミが前から既定事項のように書いていて、私もそれを見ていたから、少子化問題について論じた3月11日の記事の中で、「岸田文雄は(略)インドとウクライナを訪問し」と書いている。岸田文雄の今春の政局運営計画の一つとしてこの予定を当然視して挿入したのだった。マスコミの中で、岸田文雄がデリーの後にキエフに立ち寄ることを知らなかった者はいないし、永田町の住人も同じだろう。21日朝のWBC中継中に速報のテロップが出た後、間髪を置かず泉健太と岡田克也の「歓迎」「評価」のコメントが出たのは、この件が予め調整済みで、野党が了承していた背景を意味する。 本来なら国会の事前承認が必要な問題で、さらには、戦争中の一方の当事国に肩入れして支援する目的の外遊という、異例の首相の外交行動だが、立憲民主党は即座に「歓迎」して後押しした。何やら一人だけ、原口一博が「帰ってきたら(内閣)総辞職してほしい」とツイートし、この件に批判的に見える態度を示している。私は、原口一博と党執行部とは分業の位置関係にあり、予め水面下で役割を決め、原口一博にこのパフォーマンスをさせているものと裏読みする。つまりプロレスの芝居だ。世論は岸田文雄のウクライナ訪問に賛成の者ばかりではない。事前の議論もなく強引に国会の慣例を破った行動に批判的な者もいる。それは、日本共産党やれいわの支持者に多いだろう。原口一博の発言は、左派方面を慰撫して党のバランスを演出する対策措置に違いない。 産経FNNが3月20日に発表した世論調査では、「ウクライナに首相は訪問すべきか」の質問に対して、「訪問した方がよい」が53.3%、「訪問しない方がよい」が39.9%の回答となっている。フジの世論調査でさえ、賛否の結果は5対4なのである。拮抗している。朝日新聞の3月19日の世論調査にはこの質問項目はない。もし朝日が調査に入れていれば、賛否の比率は逆転していたかもしれない。21日の番組の生放送で反町理は、この世論調査結果の円グラフをフリップに立てながら、国民の大多数が首相のウクライナ訪問を支持していると早口でまくし立てたが、とんでもない強弁であり意図的な誤報である。マスコミは、泉健太のエンドースコメントを早々と見せ、岸田文雄のウクライナ訪問を正義の行動として演出・宣伝し、その意義づけをセメント化しているが、実際の世論の事前評価では、賛否は拮抗だったのだ。 当然ながら、岸田文雄のこの行動は憲法違反である。国会の慣例破りの前に憲法違反だ。交戦中の外国を訪問すべきでないのは無論のこと、戦争当事国の片方に政府が継戦支援目的の過剰な援助をすべきではない。日本がするべきは、停戦の呼びかけと仲介であり、平和主義の外交努力である。日本はNATOの加盟国ではないし、憲法9条が国是の国であり、G7の他諸国とは基本的な立場と方針を異にする。トルコや中国が試みている和平の模索を日本も見倣うべき、否、率先垂範で取り組むべきで、インドと国連を誘ってロシアとウクライナの間に割り込むべきなのだ。軍事作戦の即時停止を実現し、粘り強く和平案の協議と合意の場を作り支える活動に挺身すればよい。両国の戦いを、武器による攻撃と殺傷ではなく、議論と交渉の応酬に転化させるべきなのだ。… … …(記事全文4,626文字)
