Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

劣化ウラン弾批判者たちの劣化と沈黙 - 削除された広島市HPのFAQ記述

劣化ウラン弾について公正な標準知を提供していた広島市のHPが急に削除された。3/29 夜の出来事のようである。3/30 は朝からツイッターで騒ぎが起きていた。前回の記事で紹介したように、そのFAQの欄には「劣化ウラン弾が目標物に当たると爆発し、霧のようになった劣化ウランの細かい粒子が空中に飛散します。これを吸い込むと、化学的毒性により腎臓などを損傷するとともに癌などの放射線障害を引き起こします」と簡潔に核心が書かれていた。被爆地広島の市のサイトの公式整理であり、非常に意味が重く価値の高い、世界に対して影響力の大きな情報内容だった。劣化ウラン弾の無害化と正当化を図る小泉悠や高橋杉雄のプロパガンダを崩す上で、正しい根拠を提供し、有力な説得力となる決定的リソースだった。 おそらく松井一實のところに上(岸田官邸)から差配が入り、市長の指示で削除を執行したのだろう。こうなるのではないかという予感はあった。小泉悠や高橋杉雄のプロパガンダが「正しい解説」として公共の電波で放送され、報道番組のキャスターによってオーソライズされ、大衆世論の常識知になるためには、広島市のHP記述は邪魔で不都合なのである。広島市HPの公式説明の存在によって、小泉悠と高橋杉雄の言説は反駁され否定される。プロパガンダとしての正体を暴露され無力化される。彼らにとっては放置できない情報戦の障害物なのだ。だから、裏から手を回し圧力をかけて削除したのだろう。同種の事件は昨年も発生し、公安調査庁のHPからアゾフ大隊=ネオナチとする記述が削除され、姑息で佞悪な情報工作として問題となった。 広島市は今回の措置について釈明するべきだろう。なぜ削除したのか、理由と見解を述べて説明責任を果たす必要がある。世界が注目している。先週(3/25)、広島市の被爆者7団体が会見して声明を出し、「英国の行為は許されない」と非難した。今回の広島市のHP削除の事実は、広島の被爆者の意思と行動を裏切るものだ。県被団協の理事長は「劣化ウラン弾は『核のゴミ』で作られた非人道兵器で、被爆者は許すことができない」と明言している。この認識と主張は広島市民全員が共有するものだろう。広島市を訪れる外国人観光客数は近年凄まじい勢いで増加し、昨年はヒルトンホテル開業に至っている。海外から見た広島市の観光価値は、何と言っても原爆が投下された悲劇に関わる厳粛なものであり、アウシュビッツと同じ意味での平和の世界遺産という点に違いない。 観光はただ享楽や満足だけを目的とする消費ではない。人が広島を訪れるのは、そこに特別に神聖な意味があるからで、平和の尊さを噛みしめ、被爆者の苦しみを通じて人間の尊厳の重さを確認できるからである。被爆地の自治体である広島市は、そのレゾンデートルを忘れずにずっと被爆者をサポートしてきたし、被爆地広島の意義と使命を世界に訴え、世界の人々から納得(convince)と共感を受けてきた。5月のG7サミットは、平和都市広島の価値をあらためて世界に発信する機会であり、広島を訪れようとする動機づけを高める機会である。そこは平和の祈りの町であり、dignity を発見し感得できる町だ。今回、広島市がHPから劣化ウラン弾の記述を削除した事件は、世界から尊敬を受けてきた広島市の dignity を殺ぐ政治的愚行であり、世界の平和主義者を失望させる瑕疵となったに違いない。
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