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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

『責任ある積極財政」とは何か? ~プライマリーアランス亡国論(復刻版)に寄せて~

 高市政権の樹立を受けて今、かつて当方が出版した以下の二冊を、最新の情報を加味する格好で「復刻」する準備を勧めています。

  『プライマリーバランス亡国論』(2012年)

  『コンプライアンスが日本を潰す』(2017年)

なぜなら、この二冊は、高市総理が所信表明演説で明らかにした、政権構想の根幹に関わる重大な内容を13年前、8年前にそれぞれ著したものだったからです。

 

すなわち、前者の『プライマリーバランス亡国論』は高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の基本的考え方とその思想と具体的戦略を大きく共有しており、後者の『コンプライアンスが日本を潰す』は、高市早苗総理がこの度の総裁選の所見表明で明らかにした保守主義に基づいて『日本を今一度、洗濯申し候』という主張とその基本思想を大きく共有しているからです。

 

ついては、ここでは前者の『プライマリーバランス亡国論』の復刻版の冒頭の文書をご参考までにご紹介差し上げたいと思います(この書籍は出版当時の2017年に、当時総務大臣の重責を担われていた高市氏にご一読いただいたものでありました。当時高市氏は付箋を貼り、線を引く形で大変熱心にご一読頂き、ゆっくり食事しながらあれこれご質問をお受けしたものでした)。

 

これをご一読いただければ「責任ある積極財政」の基本的な考え方をご理解頂けるのではないかと思います。

 

是非、ご一読ください。

 

【『プライマリーバランス亡国論』(復刻版) はじめに】

 

■「責任ある積極財政」を掲げた高市早苗内閣の樹立

 令和7年(2025年)10月、我が国に高市早苗政権が誕生した。

高市早苗氏はそれに先立つ三度目の挑戦となる自民党総裁選で掲げたスローガンが

 

 「責任ある積極財政」

 

であった。積極財政とは、一言で言えば政府が積極的に支出を拡大するという財政態度を意味するものだが、むしろその対局にある「緊縮財政」を先に理解することで、その輪郭が鮮明に浮かびあがり、その内実がよく見えてくる。

そもそも「緊縮財政」とは、政府支出を可能な限り縮小させていくという財政態度だ。

例えば、今多くの国民は米をはじめとした食料品や光熱費などの高騰を受けて、苦しい生活を強いられている。こうした状況の中で多くの国民は、物価高騰を抑える光熱費の補助金や消費税の減税、さらには、(年収の壁の引上げ等を通した)所得税の減税を求めている。しかし、「緊縮財政」の立場に立つ政府ならば、そうした国民の要求を悉く否定する。「積極財政」とはこうした「緊縮財政」を強烈に批判し、国民の要求に応え、減税や補助金を国民の暮らしぶりが良くなるまでしっかりと政府支出を拡大使用とする財政なのだ。したがって積極財政はしばしば「反緊縮」と呼ばれることがあるのだ。

では、高市総理が言う「責任ある積極財政」の「責任」とは一体何なのか。

高市総理の総理就任直後に行った所信表明演説を読み解けば、その「責任」とは端的に言って、以下の二つから構成されると言う実態が見えてくる。

それは第一に「成長責任」であり、第二に「財政責任」である。

「成長責任」とは、経済を成長させるという「政府」の経済に関する責任。

「財政責任」とは、財政の持続可能性を実現する(=財政の健全性を保つ)という、同じく「政府」の財政に関する責任だ。つまり高市総理は、「政府財政」を活用して、日本経済を成長させると同時に財政を健全化させるのだと主張しているわけだ。

 

■所信表明演説から見えてくる「成長責任」と「財政責任」

例えば、所信表明演説には次のような一節がある。

 

『私は…日本の未来を切り拓く責任を担い、この場に立っております。今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。そして、日本列島を強く豊かにしていく。世界が直面する課題に向き合い、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す。

 …何を実行するにしても、「強い経済」をつくることが必要です。そのための経済財政政策の基本方針を申し述べます。

 この内閣では、「経済あっての財政」の考え方を基本とします。「強い経済」を構築するため、「責任ある積極財政」の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。この好循環を実現することによって、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変えていきます。

 こうした道筋を通じ、成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府債務残高の対GDP比を引き下げていくことで、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保していきます。』

 

この下りは、(細かい諸点をさておくと)整理すると次のような事を主張している。

 

1)内政外交双方において「日本の未来を切り拓く」ためには強い経済が必要

2)強い経済を「責任ある積極財政」で作る。

3)そうして強い経済を作る事を通して、「財政の持続可能性を実現」する。

 

これらの内、1)が「成長責任」に対応し、3)が財政責任に対応するわけだ。

 

■「経済あっての財政」が意味する深遠な意義

さて、以上の1)から3)の内容をさらに図式化すると次のようになる。

 

図 責任ある積極財政の基本的な考え方

 

 すなわち、緊縮とは一線を画した必要に応じた戦略的な政府支出の拡大を図る「積極財政」を行い、強い経済をつくることで、強く豊かな日本、誇りある外交によって日本の未来を切り開き、それと同時に、持続可能な財政を実現せんとするのが「責任ある積極財政」という次第だ。

 逆に言うなら、「積極財政」を行ったとしても、その規模が不十分であったりその内容が不合理なものであれば、成長できず「強い経済」が実現できなくなる。そうなると必然的に「成長責任」が果たされなくなると同時に、財政の持続可能性が確保されず、「財政責任」も果たされなくなってしまう。その結果、成長と財政の両責任が同時に未達成となり、「責任ある積極財政」とはならないのだ。

 だから、積極財政を行うのならば、「強い経済」を実現することが絶対的な必要条件なのであり、「責任ある積極財政」においてなによりもまず重要なのは「強い経済」をつくりあげることなのだ。「強い経済」がなければ、豊かな日本も誇りある外交も取り戻すことができない。それと同時に、財政の持続可能性を確保することができなくなるのだ。

 これこそ、高市総理が所信表明で強調する「経済あっての財政」の考え方なのである。

 

■「プライマリーバランス規律」がある以上成長責任のみならず「財政責任」も果たせない。

 この構図を踏まえると、恐るべき<真実>が見えてくる。

 それは、…

… … …(記事全文4,603文字)
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