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26年前、名古屋市西区で起きた殺人事件の犯人が10月末に逮捕された。
1999年11月、主婦の高羽奈美子さんが何者かによって首を切られ、惨殺された。
当時2歳の長男には危害が及ばなかったが、残された血痕から犯人は女性であり、物は盗まれていないので怨恨による殺人と思われた。
夫の悟さんは現場を残すべく、アパートを借り続け、家賃総額は2000万円を超える。
また殺人の時効はかつて15年だったが、高羽さんら、未解決殺人事件の被害者らがつくる会の働きかけにより、2004年に25年に延長、2010年には撤廃されている。
そうした中での犯人の逮捕だった。
悟さんの高校時代のクラブ活動(ソフトテニス部)の部員仲間で、在学中にバレンタインデーのチョコレートや告白の手紙を受け取ったが、それ以上はない、事件が起こる5が月前に部活のOB会で会ったが、特に変わった様子はなかった、あんな大人しい子が……と悟さんは述懐する。
しかし犯人逮捕から数日たった奈美子さんの27回忌の際に、悟さんの妹が語ったとされる、「お兄ちゃん、大学時代に豊橋の大学にまで現れて、喫茶店で泣かれて困ったと愚痴っていたあの人?」という言葉に、私も含め多くの人間が、それってストーカー以外の何物でもない、この情報が早い段階で警察にもたらされていたなら、犯人の逮捕などあっという間だったのに、ということだった。
ちなみに妹さんのこの言葉に悟さんは、言われて初めてそういうことがあったと思い出したそうである。
大学でもソフトテニスを続けていた悟さんが練習するコートの、悟さんの定位置に現れたので、「こういうことをされては困る」と駅前の喫茶店で諭すとしくしくと泣き出したという。
私はこんな大事なことをすっかり忘れていた悟さんを責めるつもりはない。
ただ、犯人逮捕という観点からすると、男はすっかり忘れ去り、妹さんがそうであるように女はしっかりと覚えていたのではないかと思うのだ。

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