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時期的にかなり古い話題となってしまうが、一呼吸おいた今だからこそ再び取り上げたいものがある。
フジテレビの女子アナウンサーに代表されるような、組織における若く、魅力的な女性がその弱い立場を利用され、セクハラされるとか、時に性接待までを強要されるという問題だ。
タレント中居正広氏とフジテレビアナウンサーA子さん(当時)とのトラブルをめぐる、フジテレビ第三者委員会の調査報告書によれば、それは「業務の延長上」の性暴力であり、女子アナの立場は「脆弱」であるという。
「番組への起用についてプロデューサーの意向が優先され、女子アナは選ばれる立場にある」、「現場のプロデューサーやディレクターがキャスティングに強い影響力を持つので、女子アナは現場でかわいがられる、とか顔を売ることが必要となる」「番組に起用されたい女子アナとしては、起用権限のある者(編成局、プロデューサー、ディレクター、メインMCなど)との間に権力格差を感じる者がいてもおかしくはない状況があった」などと女子アナの立場を擁護する。
もちろんそうなのだろう。
実際、性接待などを断り、番組から干されてしまったという女子アナの例は少なくない。
同じく第三者委員会のアンケートの中には女子アナのことを「喜び組とでも呼んどけ」という生々しい表現すら存在する。
この発言に対し、社会学者の加藤秀一氏は「女性社員を見下しつつも、『欲望の対象』として呼び求めている」と評し、女性社員を「喜び組」扱いする風潮は日本社会に今も根強い。
どんな社会の構造に背景があるかと言えば、女性を仕事仲間とはみなさず「女」とみなす、集団として女を性的に扱う「ホモソーシャリティ」にあり、フジはその典型的なケースではないかという。
さらにその際、女子社員には「いやし」まで期待するのだという。
「いやし」だったら、それこそその道のプロであるクラブやスナックの女性に求めたらどうか、そういう支出をケチり、自社の社員に要求するなと言いたいところだ。
では一方の女性側、つまりフジテレビのような在京キー局の女子アナの側はどうなのかと言えば、そもそも大学生のうちからアナウンススクールに通うとか、大学などの主催するミスコンテストで優勝するとか、ファイナリストに残るとか、女子アナになるための実績を着々と積んでいく。
応募の段階で一説には3000の倍率が面接時に100 ~200倍となり、最終面接で10人くらい。
それも局ごとに似たようなメンバーとなるという。
容姿(隣のお姉さんのような親しみやすさを備えている)、声、アナウンス力はもちろんのこと、知性(かなりの高学歴)、コミュニケーション能力、英会話力、立ち居振る舞いや育ちの良さ、気配り、頭の回転の速さ、性格の良さなど、およそ女としての能力の最大値が要求されるように思われる。
そのような戦いに勝利し、入社した女性ならさぞかし人目を惹くことだろうし、女性の側も自身の価値についいて大いに自覚し、自信も持っているはずである。
もちろん、だからと言って組織がセクハラしてもよいなどという理屈には到底ならない。
ただ、あまりにも〝無防備な〟形で極めて魅力的な女性が組織に組み込まれるという現実が恐ろしい。

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