… … …(記事全文4,778文字)9月10日、奈良市議会の一般質問中に起きた一つの出来事がネット界隈を騒がせている。「元迷惑系YouTuber」で、現在は奈良市議会のへずまりゅう(本名・原田将大)市議が、議会中に居眠りしている議員をスマートフォンで撮影し、その動画をSNSに投稿した。これが賛否両論の意見が飛び交う事態になっている。
同市議に賛同する意見の概要は、議会中に市議が居眠りすることは問題であり、これは税金ドロボーと呼ばれても仕方がないというものだ。1人でも多くの税金ドロボーを減らすためにへずまりゅう市議は身体を張って頑張っているというものである。
一方、反対の意見はどうか。こちらは、へずまりゅうが居眠り市議を告発するために自席を離れ、答弁者の前を横切り、居眠りした議員の席近くまで歩いて撮影を行ったことをとがめている。奈良市議会の規則では、会議中にみだりに席を離れること、会議目的以外でスマートフォンなどの情報通信機器を使用することを禁じている。つまり、居眠り議員の行為が問題であることは自明だとしても、へずまりゅうが議会規則に抵触する行為をしたことは、まったく別の問題として扱われるべきだという主張である。
あらためて思うのは、この出来事は居眠り行為への警鐘や議会規則違反の枠に収まらないということだ。むしろ、SNSが政治の現場に深く浸透した現代において、政治家とインフルエンサーの境界線が曖昧になりつつあるという、より大きな構造的変化を象徴しているとわたしは捉えている。このメルマガ臨時号では、政治家へずまりゅうの行動の是非を検討しつつ、SNS時代における政治コミュニケーションの変容、そして正義感と承認欲求が結びついたときに生じる危険性について考察する。
正当性のある居眠り議員の告発 ただし議会中の撮影は別問題
まず、事実関係と規則の整理からはじめよう。
前述した奈良市議会では、議会中にみだりに席を離れること、会議目的以外でスマートフォンを使用することが禁止されている。これは奈良市議会だけではなく、国会や他の多くの地方議会でも原則的に禁止である。兵庫県の斎藤元彦知事も今年6月、県議会の議場にスマホを持ち込んだとして、8月に入って議長から口頭で注意を受けた。これらのルールは議事進行を妨げないためのものであり、議員であれ傍聴者であれ、議場の秩序を守る義務がある。
https://www.city.nara.lg.jp/site/narasigikai/5086.html
一方で、議員が本会議中に居眠りをしていたのであれば、それは市民の負託を受けた公職者として問題だ。奈良市議会では実際に居眠り議員に関する陳情が提出されている。したがって、へずまりゅうが居眠り議員を問題視すること自体には一定の公益性がある。そうであれば、かれの主張にも理がある。ただし、だからといって、相手が居眠りというルール違反をしているのだから、自分が議会規則を破って撮影してもよいという理屈には決してならない。

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