… … …(記事全文4,500文字)アメリカのパーミアン盆地という地名を聞いて、テキサス州西部とニューメキシコ州南東部にまたがる乾いた大地を思い浮かべる日本人はまだ少ないだろう。しかし今、この盆地こそが世界のエネルギー地図を書き換えている震源地であることを、まず確認しておく必要がある。
米国の原油生産は日量1300万バレルを超え、文字通り世界首位に立っているが、その実に半分近くをこのパーミアン盆地一帯が担っているのだ。
かつて枯渇が近いとまで囁かれた古い油田地帯が、21世紀に入って突如として世界最大級の産油地に生まれ変わった背景には、水圧破砕法と水平坑井掘削という技術革新の合わせ技があった。
地下深くまで垂直に掘り進めたのち、坑井(こうせい:井戸のようなもの)を直角に近い角度で水平方向へと曲げ、シェール層に沿って数キロにわたり掘削を続ける。そこに高圧の水と砂、化学剤を送り込み、岩盤に無数の亀裂を入れて炭化水素を絞り出す。
この荒業が、2016年以降のインフラ投資の波と相まって、生産量を爆発的に押し上げてきたのである。近年ではAIによる掘削データの解析や自動化された運用も進み、コスト競争力はさらに磨きがかかっている。
だが、この壮大な物語の裏側で、実は日本の技術が地中深くから米国のエネルギー覇権を支えているという事実は、意外なほど知られていない。
パーミアン盆地の過酷な掘削現場を足元から支えているのは、日本製鉄やJFEスチールが手がける継目無鋼管、いわゆるシームレスの油井管である。掘削用パイプにはただ地中に穴を開けるだけの単純な鋼管では務まらない。垂直から水平へと坑井を曲げる工程では、パイプ自体に強烈な曲げ応力と高い張力が同時にかかり続ける。さらに水圧破砕で使用される化学剤や、地中深くに存在する高圧かつ高腐食性の硫化水素ガス、いわゆるサワーガス環境にも耐えなければならない。こうした複合的な過酷条件に耐えうる高強度・耐食性鋼材を安定して製造できるメーカーは世界でも限られており、日本の鉄鋼各社はまさにその頂点に位置している。
とりわけ評価が高いのは、パイプとパイプをつなぐ継手部分の技術である。単純なネジ切りでは、地中深くの高圧環境において気密性を保つことができない。
普通のネジ切り(パイプ同士をつなぎ合わせるもの)
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