Foomii(フーミー)

学校では教えてくれない日本の近現代史

六衛府(日本史研究者)

六衛府

信長が召し抱えたとされる黒人弥助について、感じたこと。

安土桃山時代、宣教師ヴァリニャーノから織田信長へと進呈され、信長が死去するまでの約15か月間、信長に仕えたとされる「弥助」が「黒人初の侍」などと銘打つ評論家? などがいて、議論になったことがありましたけど、もう一度「弥助」について考えてみたいと思います。

去年、アサシン クリード シャドウズの題名で弥助をモチーフにしたゲームソフトが大ヒットしたこともあって、一時話題になりましたが、その前年から根拠もなく「弥助は侍」と断言する人がいて、筆者もXで投稿してしまいました。


信長が弥助に太刀、屋敷、扶持を下付したことを理由に侍認定している方がおられるのですが一言。信長は気に入った者に平素からそのような行為をしていた事例だけ置いておきますね。信長は天正6年8月15日(弥助召し抱えの3年前)、京都、江州中の相撲取り1500人を安土に召し寄せ、相撲を取らせています。

六衛府 @yukin_done 2024年7月23日


信長が天正6年8月15日に相撲トーナメントを開催し、大勢の参加者、拝観者がいたことが記録に残されており、相撲好きの信長はしばしばこのようなイベントを開催して優秀者に褒美を与えたり、気に入った者を召し抱えたりしていたようです。


この日、14人の力士に熨斗つき太刀脇差、裃、扶持100石宛私宅まで下賜しています。 右御相撲取被召出何れものし付之太刀脇差衆御服かみ下御領中百石宛私宅等まて被仰付都鄙之面目忝次第也 この14人の相撲取りも織田家の士分格のある侍だったと認定するのでしょうか ※信長公記 巻11



六衛府 @yukin_done 2024年7月23日

たいとう づかう 妙仁 ひし屋 助五郎 あら鹿… 

名字無し、しこ名みたいな人もいて、それらの者が弥助以上のものを拝領していますが、信長が褒美として開催した相撲トーナメントの成績優秀者に与えているのに過ぎないと思います。

つまり彼らは武家奉公人、「寄子」、御伽衆の類だと思います。

3年後の弥助もそのうちの一人に過ぎなかったと自分は考えています。


天正9年、宣教師ヴァリニャーノ一行が織田信長との謁見のため京都に入ると、黒人の噂はたちまち広まって群衆が南蛮寺へと殺到し、投石のため負傷者が出て、死者も出そうになりました。当時の黒人は非常に珍しく、多くの日本人は同じ人間だと思わなかったのかも知れません。事実も黒人を一目見ようと、数十里遠方から見物に来た人もいたようです。

その噂を聞いた信長の招きを受けて3月27日(和暦2月23日)、都の教区長が弥助を連れて、信長の滞在する本能寺に赴き、表敬訪問しています。

珍しいもの好きの信長がこの黒人を所望したのは想像通りです。

「二月廿三日、きりしたん国より黒坊主参り候。年の齢廿六、七と見えたり。惣の身の黒き事、牛の如し。彼の男、健やかに、器量なり。しかも、強力十の人に勝たり」

『信長公記』巻十四

『信長公記』の別の写本には、信長が弥助に私宅と鞘巻を与え、ときに道具持ちをさせたと書かれています。

ちなみに信長は弥助に鞘巻の熨斗付(さや巻之のし付)を与えたとされていますが、この当時、鞘巻(鍔のない短刀)と糸巻(柄と鞘を同じ糸で渡り巻きにした、装飾的な太刀)は混同されており、おそらく糸巻の誤りだと思われます。主として贈答用です。装飾が大切なので中身が木刀や刀身を模した鉄であることもあったようです。


※金梨子地菊桐紋散金蒔絵鞘糸巻太刀拵


安土桃山時代なら陣太刀(刃が下向き)より打ち刀(刃が上向き)を帯刀するのが一般的だったと思います。


一番大切なことは「侍」と「武士」は同じ意味ではないということです。

武家奉公人でも帯刀身分なら武士ですが「侍」とは言えません。

件の弥助侍支持者はその認識を誤っていると思います。

侍というのは家来を持つ上級武士で、少なくとも士分格を持つ家柄の者を指します。

… … …(記事全文2,781文字)
  • この記事には続きがあります。全てをお読みになるには、購読が必要です。

    購読中の読者はこちらからログインすると全文表示されます。

    ログインする
  • 価格:280円(税込)

    今月配信済みの記事をお読みになりたい方は定期購読を開始ください。
    お手続き完了と同時に配信済み記事をお届けします。

    定期購読する

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2026年のバックナンバー

2025年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2026年3月19日に利用を開始した場合、2026年3月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2026年4月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

次のクレジットカードがご利用いただけます。

VISA Master JCB AMEX

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する