Foomii(フーミー)

藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

“インフレだから緊縮”の大誤解──「責任ある積極財政」が今、必要な決定的理由 

本日発売の週刊文春が、元参与の浜田宏一先生が「サナエノミクスで日本は不況になる」と題した記事をトップで大々的に掲載しています。https://news.yahoo.co.jp/articles/beca2ada1a989f16ce8881c029fc5aa87ceddd4b

 

この記事タイトルを見て驚いて中身を確認しますと、要は、

 

「インフレの今、積極財政を進めればインフレが加速し、不況になる(例えば、ガソリン税減税すれば自動車利用者が増え、かえってガソリン税が値上がりする)。だから、いまは緊縮財政が必要だ」

 

というもの。

 

もちろん、この浜田氏の「議論」は経済学的にあり得る話ではあります。

 

ですが、そうした「議論」は、「今の日本」において実際に成立するか否かは、経済学的にあり得るかどうかという「理論的」な話とは全く別問題。

 

誠に残念ながら、今の日本には、この浜田氏の議論は全く成立しないのです。

 

簡潔に記載しますと、以下の様になります

 

1.浜田さんはインフレが激しいというがそれは食料品(+エネルギー)だけの話。賃金に連動するコアコアCPIは僅か+1.6%。激しいインフレではない。だから、浜田さんの指摘は、今の日本にはあたらない。

(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

 

2.浜田さんは今積極財政すれば、インフレが加速するというが、21.3兆ならデフレギャップを埋めるだけなので、インフレにならない。

(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

 

3.しかも、食料品・エネルギーの値下げのための積極財政はインフレを抑止する(したがって、浜田さんの批判は、高市補正には全くあたらない)。

(例えば、https://the-criterion.jp/mail-magazine/231023/?utm_source=chatgpt.com

 

4.浜田さんは、今、財政・金融を緩和すれば円安が進行し庶民は苦しむというが、財政・金融を緩和すれば、内需拡大期待が生まれ、むしろ「円高」圧力がかかる。

(例えば、https://x.com/SF_SatoshiFujii/status/1998909225691656662、あるいは、https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-11-20/T60VKNT96OSG00?utm_source=chatgpt.com

 

5.浜田さんは、財政拡大でインフレ加速と言うが、現下の高市補正では、「供給力を上げる投資」が多く含まれているので、少し遅れて供給力が拡大し、確実にインフレを長期的に抑止する。

 

したがって、浜田さんの高市批判はあくまでも一般論に基づくもので、今の日本には全く該当しないご指摘だったわけです。

 

なお、浜田さんは「円安抑止→インフレ抑止のために今すぐ日銀は利上げをすべき」とも論じていますが、これも残念ながら正当ではありません。

 

簡潔に纏めると、以下がその理由です。

 

1.直近のGDPが6四半期ぶりのマイナス成長(―2.3%)、設備投資も大きく減少、個人消費もー3%で「利上げ」状況では全くない。

(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=VdzRrSmh_pU

 

2.浜田さんは円安対策で利上げすべきというが、そもそも日本の利上げの円高効果は限定的(日本が僅かな利上げをしても、米国の金利が高いままなら金利格差は殆ど変わらず、円高圧力はさしてかからない)

(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=MOdj-fjglHEhttps://finance.yahoo.co.jp/news/detail/2c3d2409daf279f992b1bf9738d8240efb0aa769

 

なお、以上に加えて、

 

3.円安そのものは悪くない。輸出金額を拡大させ、日本経済にプラス。だからさして円安を問題視する必要はない、

(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

 

という点を指摘することもできます。

 

ちなみに、上記の浜田批判に加えて…

… … …(記事全文2,986文字)
  • この記事には続きがあります。全てをお読みになるには、購読が必要です。

    購読中の読者はこちらからログインすると全文表示されます。

    ログインする
  • 今月配信済みの記事をお読みになりたい方は定期購読を開始ください。
    お手続き完了と同時に配信済み記事をお届けします。

    定期購読する

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2025年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2025年12月19日に利用を開始した場合、2025年12月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2026年1月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する