… … …(記事全文7,792文字)古代ギリシア神話の中に「トロイの木馬」という物語がある。紀元前12世紀ごろに起こったとされるトロイア戦争で、ギリシア軍がトロイア城を陥落させるために、ある策略をめぐらせた。それが巨大な木馬の中に50人ほどの兵士を潜ませ、これを捧げ物だとして敵の城内に侵入したという神話上のエピソードである。なお、トロイア戦争とは、ギリシア人の一派であるアカイア人と、現在のトルコである小アジアにあった都市トロイアとの間で起きたとされる伝説的な大戦争のことだ。
さて、ギリシア軍は撤退したように見せかけて巨大な木馬を城門前に残した。一部の神官や王女らは警戒したが、トロイア人は警告を無視してこれを戦利品として城内に運び入れてしまった。ところが、夜になってトロイア人が眠りにつくと、木馬の中から兵士たちが出現。かれらはこっそりと城門を開けて外の味方のギリシア軍を招き入れ、その結果、トロイアは陥落して戦争は終結したとされる。ちなみに、2004年に公開された映画『トロイ』(米作品)は、この神話を題材にしている。
後に「トロイの木馬」の話は、何らかの無害なものに偽装して内部に潜み、あとになって悪意ある攻撃を仕掛ける意味へと転じた。その意味を汲んで、私たちも「あれはトロイの木馬だ」などと象徴的に使う場合がある。トロイの木馬の趣旨を彷彿とさせる史実もいくつか存在するようだ。最近では無害なファイルやソフトウェアに偽装し、ユーザーが何の疑いもなく実行することで個人情報が盗まれる、そのものズバリの「トロイの木馬」と呼ばれるコンピューターウイルスが存在する。私たちも普段からコンピューターやスマホは使うため、悪意のある者への注意が必要だ。
現代の政治でも「トロイの木馬」的な事例は存在する。まさに「副首都構想」がそうだろう。本当の狙いは大阪市廃止・特別区設置構想(いわゆる「大阪都構想」)の実現であるにもかかわらず、副首都構想という名目で偽装した作戦である。なお、副首都構想とは首都・東京が災害に見舞われて首都機能を失ったときに備え、国会や中央省庁の一部機能を他都市へ移転する構想である。その実現のためには法律の制定が必要で、副首都となる都市は国からの税源移譲も受けられる。

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