… … …(記事全文8,434文字)世間一般の常識で考えるならば、水と油が混ざり合うことはない。ビーカーに水と油を混ぜて撹拌しても、いずれ分離する。ところが、両液体が混ざったビーカーに石けんを入れてかき回すとどうなるか。ビーカーの中身はだんだん白く濁り、やがて、とろみのある液体となる。
この理由は、石けんが水と油の両方になじみやすく、石けんと結びつくことで水と油の分子が引き合うようになるからだ。食器に付いた魚や肉などの油が洗剤を使えば汚れが落ちるのは、洗剤と油が結びつく性質を利用したものである。
他にも金属と非金属による合金がある。鉄と炭素は、もともと性質が大きく異なる物質だが、特定の条件で結合すると「鋼」(はがね)として強靭な素材になることが知られている。日本刀が、まさにこれである。現在は乗用車の主流になりつつあるハイブリッド車もそうではないか。同じエンジンでもガソリンエンジンと電気モーターは動力も原理も異なる。ところが、この2つにハイブリッドシステムという制御回路を媒介させることで一体化し、効率的な駆動が実現して燃費も格段に飛躍する。
性質の異なるものが1つに融合する事例は化学や物理学の世界に限った話ではない。政治の世界でも往々にして見られる現象だ。その代表が、1994年6月に誕生した自民党と日本社会党(以下、社会党)、そして新党さきがけの連立政権ではないか。これも日本政治史における「水と油の融合」の典型例といえる。
ご承知のように、自民党は戦後一貫して政権を担い、経済成長と安定を重視してきた保守政党だ。一方、社会党は最大野党として存在し、護憲や反安保、福祉国家などを掲げてきた革新政党である。これだけ見ても自民党と社会党は政治的にも思想的にも対立関係にあり、まさに水と油の関係に近い。ところが、この両党が連立政権を組んだのだから世間は腰を抜かした。
自民党と社会党などが連立したきっかけは、非自民・非共産連立政権だった細川護熙首相の退陣だった。細川政権が崩壊後、政界再編の混乱の中で自民党は政権安定を最優先させるため社会党と手を組み、「自社さ連立政権」が誕生した。長年の政敵が手を組むのだから、自民党にすれば背に腹は代えられない心境だったのだろう。

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