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X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#138「肺炎球菌ワクチン」高齢者の定期接種は必要? ~全肺炎や全死亡を減らす確かなエビデンスはない~

2026年4月8日、時事メディカルが「高齢者の肺炎『やっぱりワクチン重要』~65歳の定期接種逃さずに、4月から新タイプ~」という記事を配信し、X(旧ツイッター)に投稿していた(記事:https://medical.jiji.com/topics/4264)。この4月から定期接種に導入される新しい肺炎球菌ワクチン「プレベナー20®」の接種を呼びかける、ファイザーの肺炎球菌予防啓発イベントを記事にしたものだ。このワクチンの定期接種は65歳または特定の疾患を持つ60~64歳が対象となる。

 

これまで、高齢者向け定期接種の肺炎球菌ワクチンは、MSDの「23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、ニューモバックス®NP)」が使われていた。だが、カバーする血清型の割合、有効性、安全性及び費用対効果の知見を踏まえ、この4月からファイザーの「沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20、プレベナー20®)に切り替えることになったという(日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第8版 2026年4月1日 https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/o65haienV/o65haienV_260401.pdf)。

 

記事では、イベントに登壇した東邦大医学部教授の舘田一博氏(微生物・感染症学)が、「この新しいタイプのワクチンは有効性や安全性が確かめられている。ようやく高齢者にも定期接種で届けられるようになった。それを知ってほしい」「昔から『肺炎は老人の友』と言われる。その状況は今も変わらない。直接の死因はがんや心疾患のお年寄りの多くも肺炎を合併して亡くなっている」などとコメントしていた。

 

また、同じくイベントに登壇した琉球大学大学院の山本和子教授(感染症・呼吸器・消化器内科学)も、「侵襲性肺炎球菌感染症で入院した患者の死亡率は、全年齢で2割強、65歳以上で3割に近づき、80歳以上では3割を超えると報告されている」、回復して退院できても「身体機能が落ち、以前のような日常生活が送れなくなったり、再び肺炎にかかったり、寝たきりになったりと悪循環に陥る人も多い」と指摘。高齢者が肺炎を起こすと、認知症のリスクが2倍以上、入院費は約40万円、家族らの病院の付き添い期間は約1カ月、さまざまな影響が出ると補足したという。

 

時事メディカルがファイザーから広告費を得ているかどうかは不明だが、はっきり言ってワクチンを持ち上げる提灯記事と言わざるを得ない。イベントで語られた内容を無批判に記事にして、ファイザーが提供した写真まで使っている。医薬ガバナンス研究所の「製薬マネーデータベース YEN FOR DOC」で検索すると、舘田氏は2022年に製薬会社から、講師謝金、コンサルタント料、原稿執筆・監修料などを合わせて約574万円、うちファイザーから2件約28万円を受領していた。山本氏も長崎大学病院時代の2022年に製薬会社から約288万円、ファイザーから約17万円受領していた。そのような人たちによる啓発だということも頭に入れて記事を読むべきだろう。

 

そもそも、肺炎球菌ワクチンは定期接種化してまで、高齢者に打ってもらうべきものなのだろうか。これまでのエビデンスを見る限り、私にはそれほど必要だとは思えない。ちょうど昨年、肺炎球菌ワクチンで高齢者の入院率や死亡率を減らせるかどうかを調べたシステマティックレビュー及びメタ解析の研究結果が報告されていたので、あらためてその内容を詳しく見てみよう。

 

その論文は〝Effectiveness of pneumococcal vaccination in reducing hospitalization and mortality among the elderly: A systematic review and meta-analysis〟(肺炎球菌ワクチンが高齢者の入院率および死亡率を減少させる効果:システマティックレビュー及びメタ解析)というタイトルで、2025年9月23日に〝Human Vaccines & Immunotherapeutics〟(ヒトワクチンと免疫療法)のサイトで公開された。著者はサウジアラビアのウム・アム=クーラ大学の研究グループだ(Hum Vaccin Immunother . 2025 Dec;21(1):2561315. https://doi.org/10.1080/21645515.2025.2561315)。

 

解析の対象となったのは1997年から2024年までに発表された、PPV23(PPSV23と同じ)とPCV13の効果について調べた合計35件の研究だ(接種群計164万8919人と非接種群計261万6711人)。そのうちの大半がコホート研究(30件)で、ランダム化比較試験は3件しかない(残りが症例対照研究2件)。論文中で、これらのコホート研究はバイアスリスクが低く、交絡因子を考慮した適切な統計的調整がされていると書かれてはいるが、後で述べるように各研究によって結果のばらつきが大きく、著者らも結論でそのことを認めている。したがって、システマティックレビュー及びメタ解析と謳ってはいるが、エビデンスレベルは低いことに留意が必要だ。

 

この研究の結論として、著者らは「肺炎関連入院率が75歳以上の高齢者と慢性疾患者で顕著に減少し、全要因入院率も6%減少した」、つまり有効であったと報告している。しかし、論文の詳細を見ると、その結論を鵜呑みにはできない。23研究(24コホート)を対象としたメタ解析の結果では、肺炎関連の入院の有意な減少は認められなかった。日本でのRCT、1年間の追跡、1~5年間の追跡、75歳以上、慢性疾患を持つ高齢者集団などでは有意な減少が認められたが、欧州、アジア、北米の集団、60〜75歳では、肺炎関連入院の減少との関連は認められなかった。つまり、研究やサブグループ解析によって結果がバラバラなのだ。

 

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