… … …(記事全文2,678文字)「貨幣のことは中央銀行にまかせるには重大すぎる」とは通貨供給重視派のM・フリードマンだが、実体経済優先の観点からしてもそうだ。
就任から1年過ぎた植田和男日銀総裁に対し、そう言いたくなる。「古い日銀」への回帰である。時代錯誤ではないか。
古い日銀とは何か。さあこれから宴会だという段階で、テーブルに並べられた豪勢な料理を一斉に引き揚げる、それこそが中央銀行の役目である、とはかつて日銀トップがよく口にした。インフレになる前に金融を引き締めるべきとの信念である。
植田日銀は3月、大規模金融緩和を打ち切った。大企業を中心とした春闘賃上げが大幅であることから、需要に押されて物価が上がる循環が生まれそうだという見込みのもと、「金利ある世界」へと舵を切った。そして次は「金利上がる日常」に回帰することで、追加利上げを匂わせる発言を繰り返す。
だが、いまだに実質賃金マイナスが続いており、賃金、物価が共に持続的に上がる過程に入ったわけではない。上記の古い日銀総裁のたとえ話からすれば、植田氏の場合、景気という名の「客」が大宴会場に到着していないのに、料理を下げるぞと触れ回るのだ。上記のたとえ話で言えば、日本経済という名の「客」はまだ大宴会場に到着していないのに、料理を下げるぞと触れ回るようなものである。
