… … …(記事全文4,135文字)トランプ大統領の対中通商政策の骨組みをつくったホワイトハウスのピーター・ナバロ通商製造政策局長はその著書『攻撃姿勢をとる中国の軍国主義』(原題〝CROUCHING TIGER WHAT CHINA’S MILITARISM MEANS FOR THE WORLD〟2015年刊)で、〈我々は中国製品を買うたびに、中国の軍事力増強に手を貸している。〉と、中国の対米貿易黒字を軍拡に結びつけて論じ、〈中国に自国通貨の操作を許せば、中国は予算留保を増やし、そのカネでアメリカを打ち負かすための兵器システムを外国から買う。そんなことが毎年のように起きている。〉との米国の専門家の見方を紹介していた。
米中は2020年1月に第1段階の合意に達し、貿易戦争はひとまず「一時休戦」となった形だが、米国は中国からの輸入品の75%に関税を発動したままで、中国側も対米報復関税を取り下げていない。
第1段階合意は、中国は米国からモノとサービスの輸入を2年で2000億ドル増やすことや、知的財産権の保護など7項目にわたる。トランプ政権は中国製品の7割弱に制裁関税を課し、中国製品に対する米国の平均関税率は3・1%から21%に切り上げた。それを引き継いだ2021年1月発足のバイデン政権も据え置いている。中国も報復措置として関税を同程度に引き上げたままだし、米国が求める産業政策の抜本見直しを拒みつづけている。合意の中身は、中国が米製品の輸入を2年間で2000億ドル積み増して約1.5倍に増やす。中国政府はまた、知的財産権の保護強化、外国企業への技術移転強制の禁止、証券や保険会社の外資規制撤廃等も約束した。米国のほうは対中輸入品の約7割に制裁関税を課したままで、中国の通信機器大手、ファーウエイなどへのハイテク禁輸緩和は拒否した。米側は中国の為替操作国指定を解除したが、中国は人民元切り下げを控えるという具合である。合意の中身だけみれば、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ米国の勝利であるかのように見えた。