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山田順の「週刊:未来地図」
No.773 2025/04/29
GWに日本人旅行客まばら!
メディアはなぜこの「大不況」を伝えないのか?
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私の目が曇っていなければ、いまの日本は「大不況」に突入している。一部を除いて、庶民は物価高にあえぎ、ゴールデンウィーク(GW)だというのに、旅行にも行けない。まして、海外旅行などほんの一握りの人間だけだ。
しかし、メディアはこの状況を真っ向から伝えない。トランプ関税の影響もあるが、株価の下落は端的に日本経済の状況を反映している。じきに不動産価格の下落も始まるだろう。そして、この状況に温暖化による気候変動が追い打ちをかける。
写真:グアム、タモン湾のサンセット(著者撮影)
[目次] ─────────────
■どこもかしこも外国人観光客でいっぱい
■訪日客4000万人、約10兆円が失われるたら
■インバウンドは一般庶民の暮らしに役立たない
■GWに旅行に行かない人がなんと8割も!
■「安近短」グアム、サイパンは韓国人のリゾート
■観光客2割減でニューヨークの観光業者が悲鳴
■ワーホリ若者も観光客も消えたオーストラリア
■海外旅行も海外留学もピーク時から激減中
■GDPはかろうじて成長も個人消費は沈んだまま
■いまや最悪のスタグフレーションが進んでいる
■トランプ関税の影響はそこら中に広がっている
■トランプの「MAGAキャップ」は中国製
■セブンイレブンのおにぎりが200円以上に
■温暖かが進んでなぜ海苔は値上がりしたのか?
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■どこもかしこも外国人観光客でいっぱい
いまや全国各地、どこに行っても外国人だらけである。先日、新宿に行ったが、駅周辺にはスーツケースをゴロゴロ押している外国人カップル、外国人フェミリーが何組もいた。また、東急歌舞伎町タワーに行くと、どの飲食店も席の半分は外国人で埋まっていた。
新幹線も飛行機も同じだ。新幹線の場合、乗客の3割は間違いなく外国人である。GWになったので、この割合はもっと増えただろう。いまや新幹線は、「観光鉄道」と言っていい。
飛行機の場合、驚くのは、地方のローカル空港行きに乗っても、昔なら絶対見かけなかった外国人観光客を見かけることだ。
もちろん、有名観光地になると、外国人観光客で溢れている。私は鎌倉育ちなので、友人知己に会いに度々鎌倉に行くが、観光スポットは外国人だらけ。江ノ電鎌倉高校駅前の踏切に至っては、写真を撮っているのはほぼ外国人である。
そこで思うのは、もし、こうした外国人観光客がすべていなくなったら、日本はどうなるかだ。
■訪日客4000万人、約10兆円が失われたら
国土交通省観光庁の発表資料によると、2025年1~3月のインバウンド消費額は、前年同期比28.4%増で、2兆2720億円だった。
国籍・地域別トップは中国で、5443億円(構成比24.0%)。以下、台湾3168 億円(同13.9%)、韓国2824億円(同12.4%)、アメリカ2188億円(同9.6%)、香港1534億円(同6.8%)と続き、アジア各地からの観光客が激増している。
このままいくと、過去最高のインバウンドを記録した2024(昨年)を上回るとされるので、2024年はどうだったのかと見ると、次のようになっている。
インバウンド(訪日客)数:3686万9900人
インバウンド消費額:8兆1395億円
これを約30%上回るとすれば、今年の訪日客は4000万人を超え、インバウンド消費額は10兆円に達する。10兆円というのは、日本のGDPの約2%。もし、これがなくなるとすれば、間違いなく日本は不況になってしまう。
コロナ禍の2020年を思い返してみればいい。訪日客数は約400万人、インバウンド消費額は約7500億円と激減し、GDPは前年比でマイナス4.6%を記録した。
■インバウンドは一般庶民の暮らしに役立たない
こう見ると、現在の日本経済は、途上国並みに観光産業に依存しているのがわかる。国内の消費を考えると、それを大きく支えているのはインバウンドであると言っても過言ではない。だから、それがもしなくなったとしら、大変なことになる。
ただ、私はいつも思うのだが、これだけインバウンド消費があるのに、日本の一般庶民の暮らしは楽になっていない。実質賃金は下がり続けているのは、なぜだろうということだ。
つまり、いくら外国人観光客がやって来ようと、彼らが落とすマネーは観光業の中だけで回っているにすぎない。
それなのに、テレビは、日本に来た外国人が、日本のどこに感激したかなどという番組を放映しまくっている。そして、視聴者は、日本の和食を「安い、安い」と言って喜ぶ彼らの姿を、ヨダレを垂らして見ている。
本当に、情けないとはこのことだ。