… … …(記事全文5,822文字)
━━━━━━━━━━━━━━━━━
山田順の「週刊:未来地図」
No.849 2026/09/08
テスラのレアアース未使用のロボタクシー
「サイバーキャブ」に驚いて、
調べてみてわかったこと
━━━━━━━━━━━━━━━━━
イーロン・マスクが、自動運転タクシー(ロボタクシー)専用車両として開発した「Cybercab」(サイバーキャブ)のモーターにレアアース(希土類金属)を一切使用していない(=レアアースフリー)と公表。さらに、「米運輸省道路交通安全局」(NHTSA)の審査を受けて、すぐにでも商用運行に乗り出すという。このサイバーキャブには、ハンドルもペダルもない。完全自動運転EVだ。
こんなすごいことが、本当に起こるなら、自動車業界ばかりか、世界経済、地政学、環境問題に大変化が起こるだろうと思ったが。
[目次] ─────────────
■レアアース未使用のロボタクシーを24時間走らす
■大きな変化(パラダイムシフト)が起きる
■すでに日本のメーカーはレアアースフリーを実現している
■大型車やトラックで実現しなければ意味はない
■完全レアアースフリーを達成した日本メーカー
■クルマだけでない、レアアースは不可欠な物質
■すでに商業運行している米国のロボタクシー
■安全性の確保と法規制の統一がレバ一気に普及
■中国のロボタクシーはどこまで進んでいるのか?
■日本で米中並みのロボタクシーが普及するのはいつか?
─────────────────
■レアアース未使用のロボタクシーを24時間走らす
テスラはロボタクシーサービスを2025年にオースティンで「Model Y」を使って始めたが、最終的には「サイバーキャブ」を主力にするとし、すでに商用登録を済ませている。
そんな中、テスラのAI責任者アショク・エルスワミが、「FSD」(Full Self-Driving:完全自動運転)の最新バージョン「FSD v15」の技術統合(マージ)がまもなく完了し、来月(2026年10月)にもサイバーキャブの24時間営業(夜間走行対応)が開始される予定と明かした。
現在、テスラのロボタクシーは、オースティン、ダラス、ヒューストン、マイアミ、オーランド、タンパの6都市で展開され、週7日営業しているが、サービス時間は午前6時から午後10時までの日中帯に限られている。これが24時間になる。
しかも、サイバーキャブにはハンドルもペダルもない。すべての操作をシステムが担う完全自動運転車(=レベル4)である。
もちろん、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の認可が必要だが、認可に向けての調査はすでに始まっている。
そして、イーロン・マスクは、サイバーキャブの駆動モーターがレアアース(希土類金属)を一切使用せず(つまりレアアースフリー)、航続距離は通常のレアアースモーター車と同等、駆動ユニット1基あたり約1000ドル(約16万円)のコスト削減を見込むと公表したのである。
■大きな変化(パラダイムシフト)が起きる
以上、アメリカの報道を私が短くまとめたものが、これが本当なら、すごいことではないか? と、私は思った。
なにがすごいかと言えば、レアアースフリーを実現したこと。次に、完全自動運転EVのロボタクシーが普及段階に入ってきたことだ。
レアアースを一切必要としないEVが広く普及した場合、自動車業界だけでなく、世界の経済、地政学、そして環境問題にまで極めて大きな変化(パラダイムシフト)が起きるに違いないからだ。
EVに乗り遅れた日本の自動車業界は、一気に危機に凋落するのではないか? ガソリン車ばかりか、HVも一掃され、EVだけになる。しかも、自動運転タクシーがいつでも呼べるのだから、マイカーは必要なくなる。
レアアースがいらないとなれば、中国の独占的な力は弱まる。これがサプライチェーンと地政学を変えてしまう。
というわけで、AIを使って調べてみることにした。
■すでに日本のメーカーはレアアースフリーを実現している
じつは、私が驚いているわりには、今回の件は日本のメディアに大きく報じられなかった。マスメディアはほぼ無視状態だった。
それをまず、AIに聞くと、答えが次のように返ってきた。
《日本のメディアが驚きを持って報じない最大の理由は、日本の自動車メーカーや部品メーカー(トヨタ、ホンダ、日産、デンソーなど)が、すでに10年以上前からレアアースを削減・不使用にするモーター技術を開発し、実用化しているためです
日本は2010年頃の地政学的リスク(中国のレアアース輸出制限など)を機に、国を挙げて「脱レアアース」の技術開発を進めてきました》
■大型車やトラックで実現しなければ意味はない
さらに、AIは言う。
《運行・登録されているサイバーキャブは45台〜100台程度とみられており、商業的な大量生産の段階でこのレアアース不使用モーターが本当にコストや耐久性を両立できるかはまだ未知数です》
要するに、車重が約1.4トンと比較的軽量な2人乗りのEVで、レアアースフリーが実現したからといって大した話ではない。大型車やトラックで実現しなければ、大きな変化は起こらない、意味はないというのだ。
いずれにせよ、脱レアアースモーターにおいて、日本が世界トップクラスとは知らなかった。不明を恥じた。EVで遅れていると思ってきたので、そちらに気を取られて、誤解していたようだ。
