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イトマン事件の報道では、筆者には苦い記憶がある。
1990年9月15日、土曜日の午後。当時筆者は、日本経済新聞経済部の編集委員でアメリカや欧州を飛び回っていた。ちょうど海外出張の合間の週末にデスク仕事をさせられていた。
週末は通常、現場からの書き置き原稿をもとに紙面を編集するので、平日のような緊迫感はない。社に上がってくる記者はおらず閑散としている。が、ふと見ると特ダネを日ごろ連発する大塚将司記者が横に来て原稿をすっと出した。
「何だ、これは?」――数字と事実だけを淡々と並べた原稿だが、ことの重大性はただちにわかる。「これは超弩級(ル ちょうどきゅう)のスクープじゃないか。一面アタマにするから、意味付け、解説込みに書き直せ」と指示した。しかし大塚記者は「三面の段物でいい」と譲らない。
出された原稿の全文を以下、紹介する。後で述べるように、記事化を優先するため、そのまま全文を翌日9月16日付け朝刊で掲載した。
