… … …(記事全文1,638文字)読者の方々は、財務省=オオカミ少年論に違和感を覚えるかもしれない。いやしくも財務官僚は日本最高の頭脳をもったエリートであり、かれらが考え出す政策にまかせるのが「羊」たる国民にとって最善の選択ではないか、と信頼を寄せる向きも少なくないだろう。
確かに、我田引水に走る政治家よりも、手堅い国家エリートに政策をまかして家族や地域社会もみんな安心できるようになれば結構なことだ。一般人は自身の仕事や趣味に没頭すればよい。戦後復興から高度成長期までは確かにそんな信頼感が官僚についてそこはかとなく寄せられていた。政治家は官僚を使いこなすかではなく、官僚にいかにうまく使いこなされるかが問われた。その代表的な政治家が田中角栄だろう。ロッキード事件の疑惑を抱えたまま没したが、いまなお根強い国民人気を保っている。
ところが、こうした戦後の官僚主導型日本経済モデルは1980年代後半の株式・不動産バブルをもたらし、1990年代初めのバブル崩壊とともに潰えた。なぜか。
一口で言えば、官僚主導では激しくなる通貨・金融市場の変動に日本経済を対応させることができなかったからだ。
