… … …(記事全文1,644文字)トランプ氏は、弱肉強食の不動産ビジネスで自らを叩き上げた。著書『ジ・アート・オブ・ザ・ディール(交渉の技)』(邦訳は『トランプ自伝』〔相原真理子訳 ちくま文庫〕)では、相手を混乱させ、予測不能状態を保つことの重要性を強調している。それは相手に非合理的で気まぐれだという印象を与えて不安にさせ、交渉の場に引き出し、譲歩させるという外交戦略論、マッドマン・セオリー(狂人理論)を彷彿(ル ほうふつ)とさせる。1970年代にニクソン米大統領が好んだ手法だが、イデオロギー対立ではっきりと峻別(ル しゅんべつ)できる「敵」の陣営を相手にした東西冷戦時代ならともかく、同盟、友好関係にある国・地域を含めすべてのべつ幕なしだ。
トランプ氏は建国以来の米国の価値観とされる自由、民主主義、人権尊重の理念そっちのけで、米国第1主義、自国権益優先のディール(取引)を対外政策に持ち込む。トランプ流は戦後営々と築き上げられてきた経済と政治の国際秩序を破壊するとして、西側世界のエリートに衝撃と反発を与えている。
この狂人理論が前編で述べた西半球「ドンロー主義」の源である。
