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山田順の「週刊:未来地図」
No.815 2026/01/20
米中の本当の対決は宇宙で!
いよいよ始まる「有人月面探査」第2ラウンド
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今回は、意味不明の解散総選挙で騒いでいる状況を離れて、宇宙の話をしてみたい。目前に迫った「有人月面探査」の「アルテミス計画」(Artemis program)が、いよいよ第2ステージに入るからだ。順調なら、2月6日に大型ロケット「SLS」(The Space Launch System)が打ち上げられ、有人宇宙船が月の周回軌道に乗る。
“オレ様”大統領のトランプがNASAの予算削減を行って心配されたが、議会が反対。遅れに遅れた計画がやっと再開される。いくらなんでも、中国に先を越されれば、そのとき地上は本当に「G2」になってしまう。
[目次] ─────────────────────
■予算を削減しながら計画を推進という大矛盾
■議会の反対で前年度維持決定、その理由とは?
■思い返す、人類が始めて月に立ったアポロ計画
■月面探査はなぜ半世紀以上も中断されたのか?
■火星に行くためのステップとしての月面基地
■3段階で進んできた「アルテミス計画」
■日本も宇宙飛行士と月面探査ローバーを送り込む
■計画が遅れたため中国に先を越される可能性が
■着々と進んできた中国の月探査「嫦娥計画」
■2030年に3人の宇宙飛行士を月へ送り込む
■3つのモジュールから成る宇宙ステーション「天宮」
■宇宙での覇権確立で地球の覇権も握れる
■米中対立「第2次宇宙開発競争」のポイント
■準備完了、SLSの2月の打ち上げを待つばかり
■不安もあるが、期待にワクワクの気分でもある
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■予算を削減しながら計画を推進という大矛盾
トランプは、昨年1月の大統領就任式で、こう言った。
「われわれは明白な運命を追い求める。アメリカ人宇宙飛行士を打ち上げ、火星に星条旗を立てる」
にもかかわらず、5月に成立した大型減税法案(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル)の下で、NASAの大幅な予算削減と職員のリストラを要求した。まったく、支離滅裂、大矛盾である。
しかもトランプは、これまで遅れに遅れてきた「有人月面探査」を、NASAに対して、遅くとも2028年9月までに行えと命じたのである。カネも人員を奪ったうえ、計画を推進しろとは、いくらなんでもひどすぎる。そのため、嫌気が差してNASAを辞めた人間も出た。
もちろん、議会は予算削減に大反対。共和党の親トランプ派議員のテッド・クルーズまで反対し、この1月15日、なんとか前年度の予算の水準を維持する法案が可決された。
■議会の反対で前年度維持決定、その理由とは?
なぜ、議会はNASAの経費削減に反対したのか? そこには、2つの大きな問題があった。
1つは、同じように「有人月面探査」計画を進行中の中国との競争に負けてしまうこと。もう1つは、削減方針によって開発中の大型ロケットや宇宙船の運用を、将来的に民間に移行せざるを得なくなることだ。
NASAの予算削減案は、なんと前年度の24%強で、額にして約60億ドル(9800億円)。もし、これが実現すれば、日本も参加する「国際月探査プロジェクト」も大幅に後退してしまう。
半世紀を経て再実現する有人月面探査は、国の威信をかけたプロジェクトである。これを後退させるわけにはいかないと、上下両院とも反対意見が強く、最終的に前年度の予算の水準を維持するという修正案が賛成多数で可決された。
ちなみに、NASAの予算とあわせて、気候変動などの観測を行う「NOAA」(アメリカ海洋大気局)の予算削減案も、反対意見が続出して、前年度の水準を維持することになった。
■思い返す、人類が始めて月に立ったアポロ計画
もはや遠い昔の話となった人類初の月面到達。それは、1969年7月20日、アメリカのアポロ11号によって達成された。
そのときの月からの中継画面を、固唾を飲んで見守っていたことを昨日のように思い出す。当時、私は高校生で、教室にあるテレビの画面で、クラスメートとともに見た。
そして、ニール・アームストロング船長が言った「これは1人の人間にとっては小さな1歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」(That's one small step for a man, one giant leap for mankind.)を、その後、英語で必死になって暗記した。
「これからは宇宙の時代だ。いったいどんなことが起こるのだろう」と、期待は際限なく広がった。
しかし、アポロ計画はその後17号まで計6回続いき、18人の宇宙飛行士を月面におくり込んだだけで終わってしまった。そしてその後、誰も月の話などしなくなった。
