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山田順の「週刊:未来地図」
No.846 2026/08/18
米中冷戦は「AI覇権戦争」に!
世界は2つの陣営に分かれる。どうする日本?
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AI革命が猛スピードで進んでいる。牽引しているのはアメリカだが、中国も追いつき追い越す勢いで、米中冷戦はAI覇権争いという新局面に入った。
8月14日のロイターは、アメリカは「AI機会声明」に署名した35カ国に対し、アメリカ側に付くか中国側に付くか、意向を確認する方針だと伝えた。
はたしてアメリカは AIで、中国をリードし続けられるのか? 当然だが、周回遅れの日本は、アメリカ側に付いていくほかない。
[目次] ──────────────
■アメリカ側に付くか中国側に付くか決めよ!
■中国側の「世界AI協力機構」への対抗措置
■米中冷戦はAI覇権争いという新局面に入った
■「iPhone」の価格高騰を招く中国半導体の使用禁止
■「AI覇権戦争」はすでに昨年から激化している
■「DeepSeekショック」以上の「Kimi K3」の衝撃
■ベッセント財務長官は慌てて「蒸留」規制を!
■「蒸留禁止」発言にハイテック25社が反対声明
■中国AIの進化で「半導体・AIバブル」が崩壊?
■アメリカ側に組み込まれることで失う中国市場
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■アメリカ側に付くか中国側に付くか決めよ!
8月14日のロイターの報道によると、トランプ米政権は、6月の「AI機会声明」(AI Opportunity Statement:AIがもたらす機会についてのパートナーシップに関する共同声明)に署名した35カ国などに対し、アメリカ側に付くか中国側に付くかの選択を求める書簡を準備し、意向を確認する方針だという。
昨年末に、アメリカは日本、韓国、オーストラリアなどを中心にして「パックス・シリカ」(Pax Silica)を発足させた。これは、半導体やAI、レアアースなどの重要鉱物のサプライチェーンをアメリカ主導で固め、経済安全保障を担保するという国際的な枠組みだ。この「パックス・シリカ」の参加国(約20カ国)と、「AI機会声明」署名国に対して書簡が送られることになったのである。
この書簡は、「すべての一部となることはなんの一部にもならない」とし、「パックス・シリカ」への署名は単なる参加ではなく「約束」であると強調。さらに、「われわれの期待と衝突する重複した構想の会員資格と併存することはできない」と述べているという。
つまり、名指しはしていないが、中国側に付いたら、枠組みから外すとしているのだ。
■中国側の「世界AI協力機構」への対抗措置
このアメリカの半ば強制的なAI・半導体の囲い込みは、言うまでもなく、先月、中国が習近平国家主席の主導で発足させた「世界AI協力機構」(WAICO :World Artificial Intelligence Cooperation Organization)に対する対抗措置である。
中国は、自国のオープン型AIモデルを前面に出して、アメリカ中心のAIエコシステムに対抗する協力体制を構築しようとしている。「WAICO」に署名したのは、ロシアやブラジル、パキスタンなど29カ国。アメリカにとって予想された顔ぶれだが、カザフスタンが参加したことで、アメリカは態度を硬化させた。
なぜなら、カザフスタンは中央アジア諸国の中で唯一、「パックス・シリカ」に参加していたからだ。カザフスタンは世界有数の鉱物資源大国。ウランから、 銅、亜鉛、鉛、クロム、レアメタル、レアアースまで豊富に産出する。三菱商事などの日本企業も、カザフスタンからのレアメタルの調達に走っている。
そんなカザフスタンが中国側に付いたら、アメリカ側にとっては大きなダメージとなる。
■米中冷戦はAI覇権争いという新局面に入った
AI革命を達成し世界をリードするには、あらゆるリソースを確保しなければならない。
「GPU」((Graphics Processing Unit:画像処理ユニット)や「HBM」(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)などの高性能半導体はもちろんのこと、半導体製造装置、半導体製造に欠かせない重要鉱物、大規模なデータセンター、莫大な電力、冷却設備、高速通信網などが必要である。
これらは、とうていアメリカ一国では賄えない。とくに、レアメタル、レアアースにいたっては中国なしでは達成されない。しかし、安全保障のためにはどうしても中国依存を減らす必要がある。
そのため、アメリカは「パックス・シリカ」を通じて、中国抜きのAI開発を支えるサプライチェーンをつくる必要に迫られた。
これは、中国にとっても同じである。中国も構築した「WICO」を通じて、自国のAIモデル、技術標準、インフラ整備を海外(とくに新興国)へ広げ、自国モデルのAIを普及することで、アメリカ支配から脱しようとしている。
まさに、米中冷戦はAI覇権争いという新局面に入ったと言っていい。
■「iPhone」の価格高騰を招く中国半導体の使用禁止
ロイター報道と前後して、アメリカはもう一つの重要な選択をしたという報道が出た。報道したのはウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)。ラトニック商務長官が、アップルに対し、中国製半導体の調達は「好ましくない」と伝えたというのだ。
AIにためのデータセンターの建設ラッシュで、半導体メモリの供給不足が深刻化し、価格は高騰し続けている。そのため、アップルは低価格の中国半導体の調達を検討していると伝えられていた。ラトニックは、これを禁じたのだ。
中国依存を断ち切るというのが、アメリカ主導の「パックス・シニカ」だから、これは当然の措置と言える。しかし、中国半導体が使えないとなれば、アップル製品の価格はさらに高騰する。「iPhone」は、おそらく日本の一般ユーザーでは、手が出せない値段になるだろう。
