… … …(記事全文10,582文字)今年もまた、ヨーロッパで暑い夏がやってくるにつれて野火や山火事があちこちで続発し「やっぱり温暖化危機はウソじゃない」という議論が高まっています。
気候変動危機論者たちの特徴は、自説に都合のいいところも悪いところも含めて大きなデータ全体を見渡して、偏向のない統計的な処理をしたときどんな結論が出てくるかといった議論をはじめから拒否して「自分の実感だけが唯一絶対の真実だ」と主張することです。
彼らを説得するのは無理と分かっていても、やはりあらゆる事象は長期にわたって観察するほど統計的に信頼のできる結論が出てくるという、当たり前すぎるほど当たり前の出発点から話を始めましょう。
● 人為的に排出する二酸化炭素(CO2)には、特別な毒でも入っているのか
まず図表1をご覧ください。
地質学的な時代区分で、だいたい地球全体の平均大気温が17.5℃以上だった時代は「温室」としてサーモンピンクに塗られています。それに対して17.5℃未満の時期が続いた時代は「氷室」として薄水色に塗られています。
こうして見ると、約46億年前に誕生した地球史の最初の8分の1くらい氷室の時代が続いた以外は、平均大気温で17.5℃以上の温室の期間は長く、17.5℃未満の氷室の期間は短かったように感じます。
しかしここにはちょっとした時間軸のトリックが潜んでいて、今から5億7000万年前に始まったカンブリア紀以前の40億年くらいはずっと氷室の時代でした。つまり、じつはこっちが約8分の7で、あとの全時代は最近8分の1の中に詰めこまれているのです。
そもそも時代区分からして「先カンブリア時代」とカンブリア紀より前だったこと以外にはなんの特徴もなさそうな大ざっぱなレッテルで済ましています。なぜかと言えば、40億年ほど前に誕生していた生物の種類も、個体数も延々と少ない状態が続いていたつまらない時代だったからです。
百万年どころか千万年、億年単位でものごとを考える地質学者にとって、おもしろい変化が目まぐるしく起きるのは、図表2と3でくわしくご説明しますが大気中のCO2濃度も濃く、大気温も高かったカンブリア紀に「カンブリア大爆発」と呼ばれる生物種の激増があったからこそのことなのです。
つまり、地球がありとあらゆる生物種に満ち溢れた惑星となったのは、このカンブリア大爆発以後のことなのです。
もう一度、この年表型グラフで確かめると、右端のほうに「人為的CO26排出量増加がなければありえないほど急激なCO2濃度の上昇」としてピンクの楕円で囲ったCO2濃度の上昇が、強調されています。
でも、この程度のCO2濃度急上昇は過去に何度も起きていたことなのです。
むしろ逆に、気候変動危機論者たちが「産業革命以前ののどかで平穏な時代」と称する時期は、過去最低近くにCO2濃度が低かった時期であって、現在起きているCO2濃度と大気温の上昇は、平均値への回帰に過ぎないことも確認できます。
この程度の変化で「取り返しのつかない大災厄が起きる」と危機感を煽り立てている人たちは、酸素原子2個と炭素原子1個というまったく同じ構成の分子なのに、人間が息として吐いたり、化石燃料を燃やして出すCO2だけに、何かしら特別な毒でも含まれていると言うのでしょうか。
また、彼らは「今すぐ人為的なCO2排出量をゼロまで下げなければ、人間が絶滅するのは自業自得だとしても、生物種全体が大絶滅する危機を防げなくなる」とまで言い募ります。
ほんとうにそこまで危機的な事態なのでしょうか。図表2には、過去に起きたことが地質学者たちの間で共通認識になっている5つの大絶滅と、大気温、CO2濃度との関連が図示されています。
まず眼に飛びこんでくるのは、大爆発と呼ばれるほどの生物種激増があったカンブリア紀の大気温は現代より約10℃高く22~23℃、CO2濃度は6000ppmと現代の約15倍だったという事実です。大気温の高さ、CO2濃度の濃さは、それほど生物種の多様性を拡大することに貢献するのです。


