国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)の月例研究会パネル4月15日、田村秀男発言要旨から。
米国では現在、トランプ関税砲の影響で金融不安に陥りかけているが、米国内でトランプ氏の経済政策を批判する声はあまり大きくならない。米国の有力経済学者たちは追加関税率の算出手法を批判することはあっても、相互関税という考え方自体には反対ではない。相互主義は米国の伝統的理念であり、米国民多数にはすんなりと受け入れられる。
トランプ関税への対抗として逆関税措置を中国が発動したことがきっかけで、金融市場が荒れ出し、ドル安と株安に続いて国債相場が下がり始めた。国債は内外の投資家の最後の拠り所であり、国債相場が崩れることは米国売りを意味する。だからベッセント財務長官は中国以外の国々への相互関税上乗せ分発動を90日間猶予し、交渉に応じることで市場への衝撃を和らげようとしている。
米中関税戦争とドルというのは金融戦争の側面を持つ。米国の金融市場は自由市場だが、中国の金融市場は共産党の支配下で、徹底的に監視と規制下におかれる。この非対称の市場で米国が有利とは言い切れない。米国を支えられるのは世界最大の対米投資国で同盟国の日本しかない。ここが日本の強みであり、関税交渉でこれを活用しない手はない。
中国では不動産バブル崩壊不況が続き、若年者の失業率は16%を越える。外貨が流入しないと金融緩和できず、財政出動もままならない。輸出に頼るしかないが、そこにトランプ高関税砲が追い打ちをかける。もとより貿易ルール無視の中国は、鉄鋼、EV、太陽光パネルなど広範な品目で安値輸出攻勢をさらに加速させ、日欧、新興国や発展途上国の経済に打撃を与えるだろう。自由主義陣営はいまこそ中国包囲網を作り結束するチャンスである。
さて、湯浅氏が指摘した米国の戦狼外交という表現に一言付言しておきたい。パナマ運河の管理権はトランプ発言をきっかけに米国投資ファンドが取得した。またメキシコからの中国産合成薬物流入も中国、メキシコがようやく取り締まるようになった。グリーンランドも中国資本の進出に警戒を強める。トランプ流は中国脅威抑止で成果を挙げているわけだ。武力などによって相手国を威圧する強権中国の戦狼外交と同一視できないのではないか。
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