… … …(記事全文5,487文字)いつもメルマガをお読みいただき、ありがとうございます。
昨日、ブログで「4%ルールはなぜ米国発なのか?110年データが暴く失敗率3.7%の衝撃とリアルな資産配分」という記事を公開しました。米国市場110年間のデータでは、4%ルールの失敗率はわずか3.7%だった、という内容です。まだの方はぜひそちらもご覧ください。
▼ブログ記事(4%ルールはなぜ米国発なのか?)
https://monchi-blog.jp/4-percent-rule-data/ブログでは、4%ルールが世界的なスタンダードになった背景に、米国株式の「インフレ調整後でも年率6.2%増える」という圧倒的な歴史的成長力と、「失敗率わずか3.7%」という驚異的な再現性があることを解説しました。米国市場はまさに“チート級”の強さを持っていたわけです。
しかし、円で生活し、日本で暮らす私たちにとって、本当に気になるのは「もし日本国内の資産(日本株と日本国債)だけで4%ルールをやったらどうなるのか?」 ということではないでしょうか。
ブログ記事で予告した通り、いよいよ今回は「日本の資産(日本株・日本国債)だけで同じ検証をしたら何が起きるか」を掘り下げます。ベースとするデータは、前回のブログと同じくJavier Estrada氏の論文「The Retirement Glidepath: An International Perspective」(2015年)です。この論文のAppendix(付録)には、日本を含む19カ国それぞれの詳細データがそのまま収録されています。日本における「4%ルール」の厳しい現実と、そこから見えてくる最適解を深掘りしていきます。
これまでのメルマガの振り返りと、今回の位置づけ
本題に入る前に、これまでの流れを超簡単に振り返っておきます。
・第1回:退職ポートフォリオの真の敵は「暴落」ではなく「インフレ」。
・第2回:シーケンスリスクを避けるための「右肩上がり」のバケツ戦略。
・第3回:Vanguardが示す「年1回+5%」の最適リバランスルール。
・第4回:日本のデータを用いた「定率引き出し」の弱点と「フロア&アップサイド戦略」。
・第5回:相場に応じて引き出し額を調整する「ガードレール戦略」。これまで、堅牢なポートフォリオの「骨組み(資産配分)」や「操作方法(引き出しルール)」について解説してきました。
今回の第6回は、その完成したポートフォリオに搭載する 「エンジン(投資する市場)」 のお話です。米国市場という“最強のエンジン”に対し、“日本市場のエンジン”は4%ルールを走らせるだけのパワーと耐久性を持っていたのか。歴史的なデータで検証します。
ちなみに、第4回で使ったのは日本の学者による「日本国内データだけ」の論文でしたが、今回使うのは米国発の「19カ国+世界市場・110年間の国際比較データ」(Estrada, 2015)の中に収録されている「日本」の数字です。出処も分析手法もまったく違う2つの論文が、日本について同じ結論にたどり着くのか、それとも食い違うのか。論文のデータを使って確認していきます。
1. まず全体感:19カ国の中で日本はどのポジションか
本論文は、1900年から2009年までの110年間にわたるインフレ調整後の実質リターンを用い、「初年度に初期資産の4%を取り崩す」という条件でシミュレーションを行ったものです。
2年目以降はインフレ率に合わせて取り崩し額を調整し、毎年年初には目標の資産配分へとリバランスを実施します。これを1900年開始から1980年開始まで、1年ずつ期間をずらした計81通りの「30年ローリング期間」で検証し、30年以内に資産が枯渇してしまった割合を「失敗率」として評価しています。
そして論文には、各国について「最も失敗率が低かった戦略」だけを抜き出して比較した一覧表があります。19カ国+世界市場+19カ国平均の全21項目です。
国・地域 失敗率 国・地域 失敗率 国・地域 失敗率 カナダ 0.0% デンマーク 1.2% 南アフリカ 2.5% オーストラリア 3.7% 米国 3.7% 世界市場 6.2% 英国 6.2% スウェーデン 12.3% オランダ 19.8% スイス 23.5% アイルランド 28.4% フィンランド 34.6% 日本 37.0% ノルウェー 37.0% スペイン 40.7% ドイツ 49.4% ベルギー 50.6% フランス 56.8% イタリア 64.2% ニュージーランド 0.0% 19カ国平均 26.4%
日本の37.0%は、19カ国平均(26.4%)よりも明確に悪く、ベルギー・フランス・イタリアに次いで下から4番目という極めて厳しいグループに位置しています。
しかもこの37.0%は「日本にとって最も成績の良かった戦略を選んだ場合」の数字、つまり日本の"ベストケース"である点に注意してください。(このベスト戦略の正体は、後ほど3章で明らかになります。)
2. 日本市場そのものの体力:110年間のリターン統計
なぜここまで失敗率が高くなるのか。まずはエンジンとなる市場データを見ておきましょう。

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