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山田順の「週刊:未来地図」
No.833 2026/05/26
円安、債券安、株安の「トリプル安」
官製(国債)バブルの崩壊はもう目前に!
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今回は、これまで何度も書いてきた「財政破綻」について、再度述べてみたい。なぜなら、円安、債券安、株安の「トリプル安」が起こり始めたからだ。
高市政権は、この問題に対して、まともに対処しようとしていない。対処しようとしないばかりか、補正予算を組み、さらに消費税の減税まで行おうとしている。言うまでもないが、これは、火に油を注ぐようなものだ。
財政破綻につながる官製(国債)バブルの崩壊は、もう目前に迫っていると言うしかない。
グラフ:財務省のウェブサイトより「主要先進国の債務残高(対GDP比)」
[目次] ──────────────
■火に油を注ぐ「補正予算」と「消費税減税」
■借金の対GDP比は世界最悪、G7で断トツの最下位
■実質実効為替レートで円はトルコリラ以下に!
■なぜ、これほどまでに借金を積み上げたのか?
■取り立てがないため借金することに麻痺
■円安、債券安、株安の「トリプル安」到来!
■大量に供給されたマネーが株価を押し上げた
■今後は、株価も下落する局面がやってくる
■痛みを伴うハードランディングで日本再生
■国民の未来を担保にして現在を延命する政治
■官製バブルはいつどのように崩壊するのか?
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■火に油を注ぐ「補正予算」と「消費税減税」
5月20日の党首討論で、高市首相は二つの政策を明言した。一つは、野党の要求に沿った「補正予算」(電気、ガソリンなどの補助金)を組むこと。もう一つは、「飲食料品消費税ゼロ法案」を提出すること。
どちらも、物価高・インフレから国民生活を救うというのが目的だが、その目的は達成されない。そればかりか、逆に国民生活を地獄に導く。
なぜそんなことが言えるのか? それは、財源のほとんどを特例公債(赤字国債)でまかなおうとしているからだ。高市首相は、「できる限り特例公債の発行を抑制する」と述べたが、現在の財政状況で、そんなことができるわけがない。
となると、この施策が本当に実行されたら、円安、債券安(金利上昇)、株安の「トリプル安」は、止まらなくなる。まだ「株高」は続いているが、それも大きく崩れるときが来る。
■借金の対GDP比は世界最悪、G7で断トツの最下位
もう聞き飽きたと思うが、現在の日本の財政状況は最悪である。政府債務(国の借金)は1100兆円を超え、国の経済規模(GDP)に対する割合で比較すると、なんと約235%に達し、世界最悪だ。
日本ほど財政状況が悪い国は、ベネズエラぐらいしかない。ただし、ベネスエラには石油がある。もちろん、日本はG7メンバーのなかで断トツの最下位である。財政状況が悪いとされるイタリアでさえ、GDP比約140%だから、日本の悪さは突出している。
この状況で、長期金利が大幅に上昇したら、どうなるか?政府の利払い費(借金の利息)が急増し、払いきれなければデフォルトも視野に入る。現在の円安、債券安は、それを見越しての市場の警告である。
■実質実効為替レートで円はトルコリラ以下に!
財政状況の悪い国の通貨は、その価値を下げる。国の借金(債務=国債残高)がさらに増えると市場が判断すれば、円は売られる。これが、いまの円安のあまりにも単純な正体だ。つまり、円安を止めるのは、これ以上借金をしないこと。そして、財政を少しでも健全化することに尽きる。
円安が進めば、エネルギーと食料のほとんどが輸入頼みだから、物価は高騰し、国民生活は苦しくなる。そのために、補助金をバラまくというのは単なる「対処療法」でしかない。対処療法は繰り返せば繰り返すほど効果が薄れるばかりか、症状を悪化させる。
国際決済銀行(BIS)によると、通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」(PEER)で、円は今年の3月時点で66.33ポイント(2020年=100)。これは、半世紀以上前の水準だ。ブルッキングス研究所のロビン・ブルックス研究員は、この円の状況をトルコリラ以下と分析した。
■なぜ、これほどまでに借金を積み上げたのか?
本来、赤字国債の発行は「財政法」により禁じられている。にもかかわらず、なぜ日本政府は発行を続けることができたのだろうか?
それは、その都度、期限付きで例外的に発行を認める「特別立法」(特例公債法)という抜け穴があるからだ。これを利用して、長年にわたって与党だった自民党は、国民受けのいいバラマキ政治を続けてきた。
この国では、与党自民党も野党各党も、みなポピュリズム社会主義政党である。保守対リベラルなどというのは見せかけにすぎず、どちらも合意のうえで赤字国債を発行しまくってきたのである。当初は一時的な時限立法だったのに、1994年度以降は毎年特例公債法を国会で成立させ、国債依存に歯止めが効かなくなった。
国債は発行されると、民間金融機関が引き受けることになっている。しかし、これもほぼ見せかけで、実際は「買いオペ」を通して中央銀行が引き受ける「財政ファイナンス」が平然と行われ、発行額の過半数は日銀が引き受け続けてきた。
そのため、金利が上昇すれば、保有する国債の時価が下がり、日銀のバランスシートは悪化する。2025年9月末時点で、日銀の国債の評価損は約32兆円に達し、その後さらに拡大を続けている。
■取り立てがないため借金することに麻痺
民間のビジネスでは、借金には返済期限があり、返せなければ倒産という「清算」が待っている。しかし、政府債務は違う。中央銀行が引き受けているので、取り立てる者がいない。
そのため、政治家に倫理観や公正意識がなければ、返済などされない。されないばかりか、借金をしているということすら意識されなくなり、野放図に国債発行を繰り返すことになる。
国民もまた、国債が借金であり、将来税金で返済されるものだという意識が薄れる。バカな評論家が「国の借金と一般の借金は別物」「国債は国民の資産」などと言うものだから、国債が増税と同じだとは思わなくなる。
しかし、国債を資産として持つ投資家には、そんな感覚はない。国家財政が危ないとなれば、保持している国債を売る。その結果、金利は上昇する。円安とともに長期国債の金利がじわじわと上がってきたのはこのためだ。
