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山田順の「週刊:未来地図」
No.838 2026/06/23
サッカー・ワールドカップの熱狂で思う、
「プアジャパン」はとうとうここまで来た!
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サッカー・ワールドカップの熱戦が続いている、このままいけば、日本は決勝トーナメント(ノックアウトステージ)に進み、第1戦の対戦相手(ブラジルかモロッコ)をも破り、目標の優勝に近づくかもしない。
日本人のサッカーに対する情熱、熱狂は、思えば、1980年代のバブル期あたりから始まった。あの時代を振り返ると、日本がここまで貧しくなったことが信じられない。
すでに、メキシコもアメリカもこれまでワールドカップを開催している。メキシコ大会は1986年、アメリカ大会は1994年だ。その当時、私はなにをしていたのか?日本はどうだったのか?そして、あなたは?
- *このコラムと同内容のコラム(コンパクト版)を「Yahoo!ニュース」に寄稿しました。
- *写真:チュニジア戦に勝利した日本代表(JFA公式HPより)
[目次] ─────────────────────
■日本サッカー、ここ半世紀でいまが人気のピーク
■マラドーナとともに思い出すメキシコW杯と円高
■やって来たのは歴史的な「バブル景気」
■バブル期ホテルのコーヒーの値段は異常だった
■TDLは世界一入場券が安いディズニーランド
■庶民にとってディズニーランドは高値の花に
■アメリカ・ワールドカップで忘れられない2試合
■当時マックは日本のほうがアメリカより高かった
■「ビッグマック指数」では日本は東南アジア
■インターナショナルスクールに中国人が激増
■GDPトップ10国のなかで、唯一、経済規模が縮小
■「積極財政」を続けると円安はさらに進む
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■日本サッカー、ここ半世紀でいまが人気のピーク
昔からサッカーは欧州と南米が強く、アジアなど蚊帳の外だった。人気もそれほどなかった。それが、1968年、メキシコ五輪で、釜本邦茂選手の活躍があって、日本代表が銅メダルを獲得すると、一躍人気スポーツになった。
もちろん、それ以前から、子供たちはサッカーをやっていた。しかし、このメキシコ五輪からは火がついた。私も、小中時代、放課後の校庭で、日が暮れるまで草サッカーをやった。
そんな時代が続き、1980年代半ばのバブル時代を経て1993年についにJリーグが誕生すると、空前のサッカーブームが到来した。
しかし、ワールドカップの壁は厚く、日本代表が初めて出場したのは、1998年のフランス大会から。以後、2002年の日韓開催で初のベスト16となったが、その後はそれを超えられなかった。
ところが、ここ数年のレベルの向上から、今回は「優勝もあり得る」までと言われている。
そのため、テレビは連日の大報道である。イラン戦争も、ウクライナ戦争も、高市“中傷動画”スキャンダルも、空前の株高・円安も、なにもかも霞んでしまうほど、メディアは大騒ぎしている。
■マラドーナとともに思い出すメキシコW杯と円高
いまの若者は、メキシコがかつてワールドカップを開催したことがあると言うと驚く。しかも、それは、ちょうど40年前の1986年のことだと言うと、さらに驚く。
サッカーファンなら、メキシコ大会と言うより、マラドーナの「5人抜きゴール」と言ったほうがわかりやすい。私もあれを見たときは、本当に驚いた。
優勝は、もちろんアルゼンチン。マラドーナは大スターとなり、日本のテレビでも大特集が組まれた。
そんな1986年の記憶は、なんといっても空前の円高である。前年、1985年9月のプラザ合意により、1ドル=240円台だったドル円は、なんと150円台まで一気に円高に進んだ。日本人は急に金持ちになった。
■やって来たのは歴史的な「バブル景気」
プラザ合意による円高で、高級ブランドを筆頭に、輸入品はなにもかもが安くなった。たとえばそれまで販売価格8500円で高級酒と思われていたバーボンの「ジャックダニエル」は半額以下になった。
そのためかどうかは確信が持てないが、この年、私と友人はバーボン党になり、仕事帰りのバーで「ジャックダニエル」のロックばかり注文していた。「カナディアンクラブ」や「アーリータイムズ」が、庶民の酒だと、当時、初めて知った。
酒がこうなら、タバコも同じ。当時、ヘビースモーカーだった私は「ハイライト」から「マルボロ」に切り替えた。「ハイライト」は200円、「マルボロ」は220円だった。
もうかなり前から私は禁煙しているが、調べてみると、いま、「ハイライト」は520円、「マルボロ」は620円で売られている。アメリカでは、「マルボロ」は10ドル前後(約1610円)で売られている。
空前の円高で不況になることを恐れた政府は、低金利政策をとった。そのため、不動産、株などが高騰。歴史的な「バブル景気」が起こった。バブルは、約4年間続いた。
そうして、1989年の大納会での日経平均3万8957円をピークに、株も不動産も下落すると、1991年2月をもってバブルは終了した。以後、日本は、「長期低迷」(失われた30年)に入った。
■バブル期ホテルコのーヒーの値段は異常だった
バブルのころ、アメリカから来たメディア関係者とホテルのロビーラウンジで打ち合わせをし、コーヒーを注文すると、1杯800円〜1000円はした。
その値段を聞いて、彼らは驚いた。なぜ、日本はこんなにコーヒーが高いのか? デリカ、フードスタンド、ファストフードなどの1杯60セントのコーヒーが日常の彼らにとって、日本のホテルでのコーヒーの値段は異常だった。
「NYのプラザホテルでも4、5ドルだぞ」と言うので、「そこには土地代も入っているからだ」と説明しても納得しなかった。バブル期は、「東京23区の土地をすべて売ればアメリカ全土が買える」と言われたほどだった。
それから約40年、NYのプラザホテルのコーヒーはいま約10ドル(約1610円)になったが、いくら「安い日本」とはいえ、日本のホテルのコーヒーの値段は下がっていない。
帝国ホテルの本館1階「ランデブーラウンジ」でのコーヒーの値段は、2600円(消費税込・サービス料別)である。
■TDLは世界一入場券が安いディズニーランド
東京ディズニーランド(TDL)は、1983年にオープンし、メキシコ・ワールドカップがあった1986年に、開園4年目で黒字を達成した。
当時私は、幼稚園生だった1人娘を連れて出かけたが、大人1人のワンデーパスポートは4200円だった。
娘が生まれる前、ロサンゼルス(アナハイム)のディズニーランドに行ったとき、ワンデーパスポートは9.5ドル(ドル円240円だったので換算すると2280円)だったから、東京のほうが断然高いと思った。ただし、アトラクションごとにチケットを購入しなければならなかった。
現在、TDLのワンデーパスポートは、入園日によって料金が変動するダイナミックプライシングを採用しており、7900円〜1万900円で販売されている。
この値段は、世界のどのディズニーランドよりも安い。
・カリフォルニア・ディズニーランド:約104ドル〜(約1万6840円〜)
・フロリダ・ディズニーワールド:約109ドル〜(約1万7630円〜)
・上海ディズニーランド:約470元〜(約1万1230円〜)
・香港ディズニーランド:約639香港ドル〜(約1万3180円〜)
・ディズニーランド・パリ:約60ユーロ〜(約1万1120円〜)
■庶民にとってディズニーランドは高値の花に
英『フィナンシャルタイムズ』の記事「米国の夢も課金次第」(日本経済新聞掲載、2025年11月19日)によると、フロリダ・ディズニーワールドは、以前は「誰もがVIP」とうたっていたのに、最近は入場料を別にして1時間あたり最高900ドル(約14万4550円)のVIPツアーがあるという。
これを家族5人で3時間利用すると、計1万3500ドル(約218万3820円)。これにホテル代や交通費を加えれば、とても日本から家族でオーランドに行けたものではない。
では、TDLはどうかというと、TDLでは公式サービスとして、専属ガイドによる「プライベートVIPツアー」(44万円〜66万円)や宿泊付きの「バケーションパッケージ」が提供されている。
こちらも、日本の庶民家族にとっては高額すぎるので、主に「安いニッポン」を楽しむ外国人観光客が利用している。日本庶民は、海外のディズニーランドに行けなくなったばかりか、TDLでさえやっとになった。
■アメリカ・ワールドカップで忘れられない2試合
1994年のアメリカ・ワールドカップは、Jリーグができたこともあり、日本でも大いに盛り上がった。ただ、日本代表は惜しくも出場を逃した。
いまも語り継がれる「ドーハの悲劇」(1993年10月、アジア地区予選の最終戦において、試合終了間際に同点ゴールを決められイラクと引き分け)があったからだ。
当時、ワールドカップへの出場枠は、アジアは2枠のみ。日本は「ドーハの悲劇」で3位になってしまった。それがいまや、アジア枠は8枠。出場国数も、当時は24カ国だったのに、今大会はその倍の48カ国である。
当時のアメリカは、まだサッカー途上国。人気もほかのメジャー競技と比べたらないに等しかった。それが、独立記念日の7月4日に、アメリカ代表はブラジル代表と決勝トーナメント1回戦で激突し、大健闘ののちに1対0で敗れた。
熱烈なサッカーファンでない私も、この試合と決勝戦はいまもよく覚えている。決勝戦は、ブラジルとイタリアの優勝候補同士の対決となり、0-0のまま史上初めてPK戦となった。ブラジルが3-2で勝ったが、イタリアのロベルト・バッジョが蹴ったボールがクロスバーを越えたシーンは、忘れられない。
■当時マックは日本のほうがアメリカより高かった
1994年当時、アメリカに行ったときは、何度もマックに行き、コーラを飲みハンバーガーを食べた。ハンバーガーを食べながら、日本のほうが値段が高いことに、違和感を覚えなかった。バブルが崩壊したとはいえ、日本はまだまだ豊かな国だった。
当時、日本ではハンバーガーが210円、ビッグマックが390円だったが、アメリカではハンバーガーが85セント(ドル円は100円前後だったので、換算して約85円)、ビッグマック1.94ドル(194円)だった。
夏の間、滞在していたハワイでは、娘によく「ハッピーミール」(おもちゃ、飲み物、フレンチフライ付き子供メニュー)を買ったが、値段は2.49ドル。東京では、「ハッピーセット」という名前で、400円はした。
その後、マックは日本のデフレに対応してどんどん価格を下げ、一時ハンバーガーは100円を下回った。現在、マックは190円、ビッグマックは500円である。アメリカはハンバーガーが約2.00ドル(約320円)、ビッグマックは約6.20ドル(約980円)。完全に、逆転している。
■「ビッグマック指数」では日本は東南アジア
「ビッグマック指数」は、英『エコノミスト』が考案した価格比較指数だが、各国の物価を生活実感から比較するのに適している。
1994年のビッグマック指数(購買力平価)は、実勢為替レートがドル円約100円に対し、195.88円である。したがって、この購買力平価で見ると、日本のビッグマックはアメリカのビッグマックより約2倍高かったことになる。それが、いまでは逆で、日本のほうが2倍も安い。
ちなみに、現在、ビッグマック指数が日本と同程度の国は、ベトナム、マレーシア、フィリピンなどの東南アジアに多い。日本は東南アジア化したと言えるだろう。
■インターナショナルスクールに中国人が激増
私の娘は幼稚園(キンダーガーテン)からインターナショナルスクールに通い、最終的にアメリカの大学に進んだ。1980年代後半から1990年代半ばにかけて、インターの授業料は年間200万円ほど。それがいまやどこでも400万円を超えている。
教育無償化になった日本では、圧倒的に高い授業料だが、世界と比べると異常に安い。
北京や上海のインターの授業料は30万元(約716万円)ほどで、これに諸費用がかかる。さらに、習近平が愛国教育に舵を切り、外国系のカリキュラム(IB、IGCSEなど)を教えることを制限したため、中流上位層が家族でどっと日本に来て、子供を日本のインターに入れるようになった。
娘が通っていた当時、インターに中国人の子供はいなかった。欧米系、インド系、ハーフ、帰国子女だけだった。それがいまや、クラスの3分の1まで移住中国人(潤日:ルンリー)が占めている。この層の中国人は、日本の中流上位層よりはるかに金持ちで、英語も話す。
■GDPトップ10国のなかで、唯一、経済規模が縮小
1994年、日本の1人当たりGDPは、名目で約4万795ドル、アメリカは2万7674ドルだった(IMFのデータ)。日本のほうが圧倒的に豊かであり、1人当たりのGDPのランキングでは、スイス、ルクセンブルグに次いで世界第3位だった。
それが、2000年代に入ると順位を下げ、2000年代前半は世界5位になり、2010年代以降になると2桁順位となり、2024年〜2025年は 24位(3万3785ドル)まで転落した。この順位は、韓国、台湾よりも下である。
いまの日本は、まだまだ大きな経済を持っているとはいえ、国民が貧しい国、「プアジャパン」と呼ぶしかない。ここ10年で見ると、日本はGDPトップ10国のなかで、唯一、経済規模が縮小した国である。
アメリカは18.8兆ドルから32.4兆ドル(72%増)。中国は11.5兆ドルから20.9兆ドル(82%増)。ドイツ、英国なども50 %以上の増加を記録している。
■「積極財政」を続けると円安はさらに進む
現在、株価(日経平均)は7万2000円を超えたが、景気に好況感はまったくない。物価上昇によって、一般国民の生活は苦しくなる一方である。物価高直を招いている直接の要因は止まらない円安であり、ドル円は161円台に突入している。
円が安くなればなるほど、日本は貧しくなる。「プアジャパン」は止まらない。為替レートは国力を反映している。市場は、日本の財政状況の悪化を見据えて、円を売っている。
それなのに、高市政権は、さらに円を安くする「責任ある積極財政」という名の「放漫財政」を行っている。一刻も早く経済・金融政策を転換し、バラマキを止めて政府部門を大幅に縮小し、国債発行を抑えて金利を上げ、円に対する信認を回復するべきだろう。
「国旗損壊罪」「皇室典範改正」「総花的17分野への成長投資」「食料品消費税1%」「国家情報局設置法」「スパイ防止法」「防衛増税」など、なぜ急ぐのか?
しかも、これらを行うための財源などどこにもない。ワールドカップの熱狂は、いっとき、日本の衰退を忘れさせてくれる。そんな日本になってしまった。
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■著者:山田順(ジャーナリスト・作家)
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