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山田順の「週刊:未来地図」
No.840 2026/07/07
中国が着々と進める「脱欧米」化
このまま進むと、世界はどうなるのか?
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なぜか、日本人は中国を嫌い、中国でいまなにが起こり、この先どうなっていくのか、あまり知ろうとしない。大国となった中国の変化に、大きな影響を受けるというのに、この国との関係をなるべく断ち切ろうという言論が主流になっている。高市首相は、まさにそうである。
いま、中国が積極的に進めているのは、「脱欧米」化である。なにからなにまで、自前で行い、中華文明を復興させる。そうして、新・中華文明をつくり、それを世界に広げようというのだ。
写真:2026年5月、北京での米中首脳会談。近平国家主席とトランプ米大統領(人民日報)
[目次] ──────────────
■「中国の夢」は「脱欧米」による中華文明の復興
■若者の間で広まる「国潮」(グオチャオ)運動
■軒並み売り上げを落とす欧米の高級ブランド
■米国の大学との提携プログラムが次々見直しに
■インターまで愛国養育を強要して欧米教育を排除
■世界最先端に追いつくのは間近!? 半導体産業
■一部は米の技術レベルに達している「中国AI」
■「ソブリンAI」の開発・導入においてもリード
■「国産OS・アプリ」と「6G」も内製化に!
■中国人民銀行による2つの人民元の国際決済組織
■着々と進む人民元取引。2020年の約4倍に!
■「再生可能エネルギー」大転換で米中逆転
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■「中国の夢」は「脱欧米」による中華文明の復興
中国は、習近平政権になる前まで、つまり胡錦濤政権までは、欧米がつくりあげた世界秩序のなかで、発展を遂げてきた。政府も国民も、欧米先進国の文明・文化を取り入れて、豊かさを追求してきた。
それが、米中対立が進むことにより、徐々に変わった。
習近平は、欧米文明・文化から独立した中華民族と中華文明・文化の復興を国是にし、2027年の党大会で、「中国の夢」を前面に打ち出した。
「中国の夢」とは、今世紀半ばまでに中国を「富強・民主・文明・和諧・美麗」強国にするという政策で、中国が新たな世界秩序をつくるというのだ。
つまり、「脱欧米」である。
「中国の夢」宣言から約10年、コロナ禍を経て、中国の社会は大きく変わった。いまや、欧米を崇拝、追随するというムードはなくなった。
■若者の間で広まる「国潮」(グオチャオ)運動
「脱欧米」を端的に示すのが、国民生活から、欧米ブランドが消えつつあることだ。
「国潮」(グオチャオ:Guochao)運動(=China-Chic)というカルチャームーブメントがZ世代を中心とする若者の間で広がり、中国の伝統文化や美意識を現代のデザインやテクノロジーと融合させることがトレンドになっている。
このムーブメントは、フード、ファッション、コスメ、エンタメ、家電など幅広い分野に及んでいる。
その結果、たとえば、「瑞幸咖啡」(ラッキンコーヒー:Luckin Coffee)が中国市場における店舗数と売上高でスターバックスを抜いた。スポーツブランド「李寧」(リーニン:Li-Ning)は、伝統的な中国の要素や漢字を取り入れたストリートウェアで大ヒットとなった。また、「花西子」(フローラシス:Florasis)は、欧米コスメを駆逐して中国No.1のコスメブランドとなった。
映画では、ハリウッド映画が流行らなくなり、昨年は自国アニメ映画『ナタ 魔童の大暴れ』(哪吒之魔童鬧海)が、空前の大ブームを巻き起こし、単一市場において驚異的な興行収入(約22億ドル、約3500億円規模)を記録した。
■軒並み売り上げを落とす欧米の高級ブランド
中国の「脱欧米」を端的に示すのが、欧米の高級ブランドがまったく売れなくなったことだろう。
かつて、中国の若者は、日本の若者がそうだったように、欧米の高級ブランド、グッチやシャネルなどに熱中し、それを持つことがステイタスだった。
しかし、いまや中国に進出した欧米高級ブランドは次々に店仕舞いしている。
もっとも不振なのが、グッチ(仏ケリング)で、ここのところ毎年10%以上売り上げを落とし、オンライン売り上げにいたっては最盛期に比べて半減した。
ケリングのライバル「LVMH」(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)も、主力ブランドのヴィトンやディオールなどの売り上げを落とし、いくつかの店舗をクローズした。
欧米高級ブランドの不振の原因は、「国潮」運動だけにあるのではない。長引くデフレによる消費意欲の減退。中古ブランド品市場の拡大なども大きな原因だ。中国人観光客の日本での高級ブランドの“爆買い”も、いまや昔話になった。
